2014/07/03

河野談話検証、全国紙+日経の社説読み比べ

検証結果を発表する菅官房長官(6.20
「評価は専門家に委ねたい」

河野談話の検証についての全国紙4紙と日経の社説。結論から言うと、今回一番良かったのは毎日新聞だろうか。毎日=80点。読売・日経が50点。朝日・産経30点といったところか。各紙の社説は、ココにまとめてある(記事の中にリンクも張った)。



毎日新聞[社説]は、検証作業を一応評価。その上で論争に終止符をと訴えている。日韓両国が「緊密な文言調整をしていたことが明らかになった」とし、河野談話が「政治的文書の性格を帯びていた」ことを認めている。ただし、だからと言って「正統性が損なわれたと考えるのは誤りだ」とも(産経の結論とは真逆)。河野談話継承を当然としつつ、韓国政府がアジア女性基金を評価していたことが明らかになったと指摘。韓国側に「配慮を求めたい」とこう苦言を呈している。

過剰な表現で一方的な批判をするのは控えてほしい。こうした言動への日本国民の不快感が、談話見直しへの一定の支持につながっているからだ。

「当時の日韓の担当者が・・・歩み寄った姿勢を評価したい」と前向きに検証結果+河野談話を受け入れた上で、日韓双方に配慮を求めている。韓国側にも物申す姿勢は朝日と一線を画した。


ガッカリは、これまで比較的冷静にこの問題を論じていた読売[社説]。「談話の綻びが、改めて浮き彫りになった」と検証自体は評価。しかし、「事実関係よりも政治的妥協・・・を優先した」と河野談話については厳しい。「河野談話があるために、政府は有効な反論を行えずにいる」。こういった認識はちょっと古いと思う。すでにこの話は、河野談話を離れて一人歩きを始めている。「談話の見直しは、いずれ避けられないのではないか」というのは、見通しというより願望だろう。


朝日新聞[社説]は産経新聞と並んで悪い(逆の意味で)。

(談話の文言に関して)一部は韓国側の意向を受け入れたが、日本政府独自の調査に基づいてつくった。最終的には韓国側と意見が一致した

これでは、日本政府が調査したらたまたま韓国と同じ結論が出たみたいである。おまけに「一方的に公表されるのは信義に反する」と韓国政府を代弁。「日韓の外務省局長級協議も中断する可能性が出てきた」と、余計な事をしてくれたと言わんばかり。「もう談話に疑義をはさむのはやめるべきだ」って、宗教ではあるまいし。護憲ならぬ理屈抜きの「護談話」派である。毎日と違い韓国側を諌める様子も無い。そして、「もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済であることは論をまたない」と大いなる綺麗ごと。あの人たちは、今、ワールドツアー中である。よく、こんな白々いことを言えるものである。

報告書は次のように指摘している。・・・資料収集や別の関係者への調査によって談話原案が固まった。・・・彼女(慰安婦)たちの証言を基に「強制性」を認めたわけではない

今回の検証でさらに揺らいだ慰安婦証言の信憑性(裏づけ調査は行われていなかった)を河野談話見直しに繋げないよう牽制しているのだろうが、昨年朝日新聞は、「韓国で実施した聞き取り調査を東南アジアでは回避していた」と大々的に報じたが(確か一面?)、今にして思えばとんだ空騒ぎだったようだ。

河野談話をめぐって『負の連鎖』を繰り返すことなく、今度こそ問題解決の原点に返るべきだ。

というのが結びなのだが、河野談話は慰安婦騒動を何とか収めようようと当時の韓国政府と日本政府が苦心して作り出したものである。元凶にこんな事を言われたら開いた口が塞がらない。30点は高すぎたかもしれない。


産経[社説]も良くない。いつものことながら空回りしている。「(強制性の)唯一の根拠とされた・・・聞き取り調査」がまとまる前に談話が作られたことが明確になったことで「信頼性が、根本から崩れた」としているが、これは朝日新聞の方が正しい。慰安婦の証言が唯一の証拠とされるのは、強制性ではなく強制連行(徴用)だろう。なにより、河野談話が強制連行を認めたものでない事は今回の検証作業が明らかにしている。こういった場合、相手国とすり合わせをしてはいけないというものでもないだろうし、毎日新聞が言うように、それによって正統性が損なわれたと言うのは無理だろう。河野談話を見直さないならなぜ検証などしたのかと怒っているから、産経としては今回の検証作業はゼロ評価らしい。

産経は河野談話に全責任を負わせているが、セキュリティホールがあったにせよ、談話を拡大解釈・悪用する連中がいなければこんな事にはなかったはずである。


日経[社説]。他意はないのだろうが、「自民党の保守派などは『軍の関与や・・・を示す証拠はない』と談話を批判してきた」はないだろう。軍が関与していないなどと言ってる議員って誰よ?「靖国参拝などと相まって欧米からも『歴史を書き換えようとしている』と懸念する声が出た」と言うが、日経としてはそういったクレームに納得しているのだろうか?商売以外に関心のないあきんどが、商売に差し障りのあることだけは御免だと言っているように聞こえる。

河野談話の蒸し返しはもうやめて、未来につながる日韓連携を考えるときだ。

河野談話が悪用されているから再検証なのだろうに、蒸し返しとは・・・。日経は取引上のトラブルが発生した時、契約内容や契約の経緯など調べ直さないのか?そういうのを蒸し返しと呼んでいるのか?



毎日

河野談話とは 「旧日本軍の関与を認めた(もの)」「談話の焦点である『強制性』」
検証の意義 「検証を・・(未来志向の)契機にしたい」
結論 談話継承・・・当然だ」 「韓国側にも配慮を求めたい」

読売

河野談話とは 「焦点の募集の強制性・・・『総じて本人たちの意思に反して行われた』」
検証の意義 「談話の綻びが、浮き彫りに」 「国際社会の誤解を解くうえで一定の意味がある」
結論 「河野談話の見直しは、いずれ避けられないのではないか」

朝日

河野談話とは コメントなし
検証の意義 マイナス。「(韓国に対して)信義に反する
結論 「局長級協議も中断する可能性が出てきた」 「大切なのは元慰安婦たちの救済

産経

河野談話とは 募集の強制性を認めた」「信憑性のない作文
検証の意義 ゼロ評価? 「韓国の修正要求を入れ作成された過程が・・・明らかにされた」「見直さず継承する・・・検証も何のために行ったのか
結論 「事実を発信していかねば、新たな謝罪要求を生む」

日経

河野談話とは 軍が慰安所の設置・管理に『直接あるいは間接に関与した』と断じ(た)」
検証の意義 プラマイゼロ。 「破棄させたい側にも不満足なものとなった」
結論 「河野談話の蒸し返しはもうやめて・・・日韓連携を考えるときだ」