民族的快感、沸く韓国 米の慰安婦決議案 ホンダ議員、英雄扱い
【ソウル=黒田勝弘】韓国がまた慰安婦問題で興奮状態だ。とくにマスコミは米議会での日本非難決議案をめぐる動きに対し「日本軍の慰安婦犯罪はアジアを超えて世界的な公憤の対象になった」(9日付、文化日報)「対日圧力の世界化ネットワークを」(同、朝鮮日報)「自ら孤立を招く日本外交」(10日付、東亜日報)などと大いに歓迎し、連日のように日本非難を展開しながら“民族的快感”を楽しんでいる。
韓国では元慰安婦たちは、日本帝国主義による一方的被害者としてすでに、“民族的英雄”のような存在になっている。そのイメージに反する「日本軍による強制連行はなかった」「河野談話見直しの必要性」などといった日本側での主張や意見、弁明などは、一切受け付けない状態だ。
強制性をめぐる論点についてごく一部には、日韓歴史共同研究のテーマにしてはどうかとの声もあるが、韓国にとって“慰安婦カード”は絶えず「日本の非道徳性」を非難し、自ら高みに立って「日本は経済大国であるにもかかわらず国際社会で十分に認めてもらえない主な原因が歴史歪曲(わいきょく)にあるという点を知らなければならない」(3日付、中央日報)などと教訓を垂れることのできる貴重なカードだ。
日本に対する道徳的優位を誇示するためには、慰安婦は韓国にとっては絶対に日本の国家的強制によるものでなければならない。1993年の河野談話にいたる日韓外交交渉で、韓国側が「日本が強制性を認めない限り世論を納得させられないと、こだわったのもそのため」(ソウルの外交筋)といわれ、韓国の運動団体やマスコミが慰安婦問題で「強制」という単語を繰り返し使うのもそのせいだ。韓国の公式歴史観では、日本統治時代の不都合な出来事はすべて日本による強制として教えられている。
従って韓国にとって強制性の問題は民族的自尊心がかかった問題になっており、国際舞台で独り歩きしている「20万の性奴隷」が事実かどうかや、最初に慰安婦問題を訴えた故金学順さんの経歴のあいまいさなどは関係なく、もはや絶対譲れないものになっている。
今回、韓国が日本非難で勢いを得ているのは米議会が味方に付いたと見るからだ。決議案に熱心な日系のマイク・ホンダ議員は親韓派として英雄扱いされ、マスコミ・インタビューなどで大々的に紹介されている。
米議会での決議案の背景には、民主党支持が多い在米韓国人社会などの運動や世論工作があるといわれるが、今回の慰安婦問題をめぐる韓国でのマスコミ論調や識者の発言には、「日本人拉致問題をめぐる日本における北朝鮮たたきに対する報復心理が微妙にうかがわれる」(ソウルの外交筋)との見方がある。
たとえば朝鮮日報の東京特派員は「ナカヤマ夫婦の場合」と題する長文の日本批判コラム(7日付)で、中山成彬・元文科相と夫人の中山恭子・首相補佐官(拉致問題担当)を取り上げ、「夫は自分の国の拉致犯罪(慰安婦?)を熱心に否定し、妻は北朝鮮の拉致犯罪を熱心に世間に知らせている。こうした二律背反が現在の日本の姿だ」と書いている。
日本人拉致問題に関連し、過去の日本の朝鮮半島支配時代の出来事を取り上げて日本を非難し牽制(けんせい)しようとするのは、自らに対する非難を免れたい北朝鮮当局および親北勢力の常套(じょうとう)手段だ。北朝鮮に最も批判的な朝鮮日報でさえ、日本非難では独裁国家・北朝鮮の理屈に簡単に同調してしまう。「慰安婦問題の国際化の背景には“北朝鮮の影”がある」(同筋)との声も聞かれる。
産経 2007.3.14 [要確認]
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