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2012/03/24

新慰安婦反論動画はどこまで世界に通用するか?



数ヶ国語で日本文化剽窃問題や竹島問題を動画にして、韓国のネットメディアや日本のテレビにも取り上げられたWJFプロジェクト。そのWJFプロジェクトが慰安婦問題の動画(セックスと嘘と従軍慰安婦)を公開した。現在の所、英語版と日本語版が完成している。失敗に失敗を重ねて来た日本のカウンター・プロパガンダ。今回のWJFの動画(英語版)は、新しい流れを作り出せるだろうか?(下は日本語版)



他人に何かを伝えるのは難しい。そこには工夫がいる。相手に合わせて伝える技術が必要とされる。理解には段階があり、事実を言えば誰にでも理解されるというものでもない。

慰安婦問題は、20年にも渡る日本に対するネガティブ・キャンペーンである。日本人として怒らない方がおかしい。しかし計算もなく言い返しても、国際社会では状況を悪くする一方である。たとえその言い分に一面の真実があるとしても、である。そのよい例が2007年の意見広告「THE FACTS」であった。

小学3年生に5-7が数式として間違っていないと言っても分からない。負の数を習っていないからだ。「Jyugun-ianfu(従軍慰安婦)などいなかった。いたのは ianfu(慰安婦)だ!」などと言っても外国人には意味不明だし、強制連行を巡る議論(強制連行とは戦時中の労務動員を指す左翼用語だったが、形勢不利になった強制連行派が言葉の意味をすり替えた)を知らない外国人に「強制連行はなかった」と言っても、Comfort women denier(慰安婦否定論者)!と怒らせるのがオチである(実際に、英語の議論の中でこのパターンで自滅している人が少なくない)。

そんな状況下でどうやってこちらの言い分を伝えて行くかだが、WJFプロジェクトの制作したこの動画には、これまでにない配慮や工夫が見られる。

個人的な感想を言えば、近世の日本と朝鮮を比較した部分が自国を美化し隣国を貶めていると受け取られないだろうかという不安はある。この場合、内容が事実かどうかではない。明るい表情の日本人と冴えない韓国人の写真が動画の中で対比されているのも作為的に見られるかもしれない。問題は第三国人にどう思われるかである。そこに一抹の不安を覚える。

もちろんそれは製作者の本意ではなく、英語版のコメントの中には作者の意図を理解せず韓国人に対する蔑視をあからさまにしているのも見受けられるが、製作者自身はブログでこの様に釘を刺している。

この動画をご覧になるかたも、いわゆる「嫌韓的」な感想をもって終わるのではなく、あるいは「日本すごいじゃん」というおごった気持ちになるのではなく、もっと冷静に冷徹に歴史の真実を見つめる姿勢をとっていただきたいと思います。


しかし、慰安婦問題に興味を持つような欧米のリベラルは自国のケースを含め「文明国が未開国を文明化した」という構図を好まない(保守派は別)。また、現代の韓国の社会問題の原因を李氏朝鮮の時代にまで遡るというのも、どうだろうか?なんだか、「日本軍性奴隷制」の根本を天皇制(家父長制)に結びつける日韓のフェミニストの論法と重なって見える。

それでも、製作者は「互いに罵り合うかわりに、援助の手を差し伸べあって、共に問題を解決しようとすることもできるはず」と訴える(12:30)。慰安婦問題については、「様々な『個別事例』が発生した」ことも認めている(17:40)。そして、「すべての慰安婦は自発的に慰安婦となった」というのも、「20万人の女性が日本軍によって拉致された」というのも「ナンセンスである」と結論づける(17:50)。

「慰安婦は金をもらっていた」「強制連行はなかった」といったこれまでの反論より、ずいぶん洗練されていないだろうか?いろいろケチもつけてしまったが、この動画を作るに当たっては多くの時間と労力を費やしたはずである。製作者に敬意を表したい。

もちろんこの動画ひとつで国際常識が変わるわけではない。これからも様々な人が、各々のやり方でこの問題に立ち向かっていかなければならないのだろう。その際、切り口は色々あるはずである。自分はこの動画の全てに賛成しているわけではないし、自分ならこういうアピールの仕方はしないと考える部分もある。しかし感情を押さえて丁寧に説明しようとするこの動画は、後に続こうという人々にとって一つの道標になるのではないか。製作者がプロジェクトのYouTubeページにこのようなメッセージを載せていることも紹介しておきたい。

差別的と取られる発言、過度に侮蔑的な発言は、問題が世界に広く理解されていくうえで妨げになるものと考えています。

WJFプロジェクト(YouTube)