「韓日という二国間の次元にとどまる問題ではない」「人類の普遍的な価値に反する行為」というのは、過去の問題を今頃騒ぎ立てることに疑問を抱いたり、他人の喧嘩にお節介を焼きたくないと考える第三国の人々を折伏する為の言い訳であるが、こうした言い訳がマニュアル化されたように上から下へと徹底されているような印象である。
「慰安婦問題は全人類の課題」
「ドキュメンタリーを制作して海外に知らしめたかった」
「慰安婦問題は韓日という二国間の次元にとどまる問題ではない。人類の普遍的な価値に反する行為であることを世界中の人々に知らせたいと思った」
旧日本軍の従軍慰安婦問題にスポットを当てた韓国の国際放送「アリランTV」のドキュメンタリー番組『One Last Cry(ワン・ラスト・クライ)』が、今月初めにインドネシアで開かれた世界人権映画祭「平和・インスピレーション・平等国際映画祭(IFFPIE 2013)」で、短編ドキュメンタリー部門最優秀賞と脚本賞を受賞した。制作に携わったムン・ゴンヨン・キャスター(32)とパク・テリョル・プロデューサー(35)は「全世界の誰もが共感し、関心を持てる作品を作るため努力した」と語った。
このドキュメンタリーには韓国をはじめ中国・フィリピン・オランダ出身者など被害女性20人の証言が収録されている。また、国際法の専門家らにインタビューし、国際的な視点からの解決策も模索している。英語で制作されたこのドキュメンタリーはアリランTVを通じて3月と7月に世界188カ国で放送された。
ムン・キャスターとパク・プロデューサーがドキュメンタリー制作を決心した理由はシンプルなものだった。謝罪しない日本を見てモヤモヤしたものを感じてはいたが、これを全世界の人々に伝える適切な映像がないことの方にもっと強いモヤモヤを感じていたからだ。二人は韓国にだけ焦点を合わせるのではなく、国際的な視点からドキュメンタリーを作ることで意気投合した。
今年初めから本格的に始まった制作作業だが、その道のりは決して順調ではなかった。パク・プロデューサーは「生まれて初めて見る韓国人の前で、被害女性たちにとって覚えていることさえ苦痛となることを話してほしいと説得するのは非常に困難な作業だった」という。一人にインタビューするのに何度も連絡しなければならなかった。韓国よりも慰安婦問題に消極的な中国や東南アジアの社会的なムードも壁になった。被害女性たちは政府や社会からそっぽを向かれ、沈黙することに慣れてしまっていた。高齢でインタビューが困難な被害女性も多かった。
ドキュメンタリー制作のため専門チームが組まれたというわけでもなかった。1日3回の定時ニュースをこなすムン・キャスターは仕事が終わった後や週末にドキュメンタリー制作に携わった。パク・プロデューサーも他番組の制作を担当、その合間に制作作業を進めた。「会社に了解を求めてから10日目にやっと中国・フィリピン・オーストラリアへ行き、インタビューを撮影した。授賞式でドキュメンタリー制作費用が2000万ウォン(約180万円)だったと話したところ、出席者たちは驚いていた」(パク・プロデューサー)。
「12歳で旧日本軍に家族を奪われ、慰安婦として連行されたフィリピン人女性の涙が忘れられない。インタビューを終えて帰ろうとすると手をギュッと握られ、『私の証言で私のような被害女性の立場に変化が起きるようにしてほしい』と頼まれた」(ムン・キャスター)。
英語で制作されたこのドキュメンタリー番組は、元従軍慰安婦たちが暮らす「ナヌムの家」を訪れる外国人も見ることができる。アリランTVでは「ナヌムの家の活動家たちが訪米する際には、議会でこのドキュメンタリーを上映する計画がある。今後は海外に慰安婦問題を知らしめる資料としても活用していく」と話している。
朝鮮日報日本語版 2013.9.29