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2014/03/20

ドイツはナチス利用の日本叩きに与しない (ニューズウィーク)

ペンシルバニア大のステンドグラスも受難

ドイツの戦後を賞賛することで、日本を貶める。慰安婦騒動でも用いられるテクニックだが、ニューズウィークは韓国のこのテクニックを模倣した中国を取り上げている。

韓国や中国が「慰安婦・南京事件=アジア版ホロコースト」キャンペーンを始めたのは、最近のこと。「ドイツを見習え」言説は一昔前に日本で流行り、いつしか廃れた。定かではないが、これがルーツではないかという気がする。朝日新聞は、ドイツを見習えキャンペーンの旗振り役だったと言われている(要確認)。ここでも良心的日本人が火付け役なのである(たぶん)。

もっと昔は、インドやスイスを理想視するのが流行ったが(流行らせたのは似たような人々ではなかったかと)、これもとっくに廃れた。あれは、高度成長期や冷戦期ならではの妄想だったのだろう。日本では一過性のブームだが、ドイツを見習え論は韓国に、続いて中国に飛び火し、今やジャパン・バッシングの切り札として大活躍である。今日も、アメリカの大学に旭日旗に似たデザインのステンドグラスがあると言って一部の韓国系が騒いでいる。

現在の朝日新聞はドイツを見習え論を一応は引っ込めたが、アンネの日記が破られるという事件に関して「日本は近隣国と歴史認識などをめぐる火種を抱え、欧米からも疑念の目が注がれている。その中での出来事・・・」などと安倍政権とナチズムを結びつけるかのような社説に書いている。

ナチス利用で反日をたくらむ中国にドイツは迷惑顔

習のホロコースト施設訪問を断ったドイツは過去からの「卒業」を目指している

ジェーソン・オーバードーフ

ヨーロッパでは、外交でうまく立ち回るために忘れてはならない鉄則がある──「第二次大戦について語るな」。

だがドイツ(と日本)にとって不幸なことに、中国はこれを知らないらしい。

今月末にドイツ訪問を予定している中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、是が非でも先の大戦について触れたいようだ。ロイター通信によれば、中国側はベルリンのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)記念碑を訪問して記者会見を開きたいと要求したが、ドイツは拒否したという。

中国の狙いはナチスの暴虐についてドイツを非難することではない。むしろ戦後何十年にもわたって反省を重ねてきたドイツを褒めちぎり、それとは対照的に中国の思うように謝罪しない日本を執拗に批判することだ。

だがスイスのザンクトガレン大学の政治学部長ジェームズ・デービス教授は、中国の思惑はドイツの神経を逆なでするだけだと指摘する。「地域の大国にのし上がろうとする中国の企てに引き込まれるのは、ドイツにとって何の得にもならない。まして中国と日本の板挟みにもなりたくない」

中国が第二次大戦を持ち出すのは、これが初めてではない。12年にポーランドのアウシュビッツ強制収容所跡を訪問した当時の温家宝(ウェン・チアパオ)首相は、日本に当て付けて「歴史を記憶する者だけが良き未来を築くことができる」と述べた。

中国は今年1月には、初代韓国統監だった伊藤博文を暗殺した朝鮮独立運動家、安重根(アン・ジュングン)の記念館をハルビンに建立。歴史問題で韓国と徒党を組み、日本を守勢に立たせる狙いだ。

「歴史カード」には限界も

中国の専門家によれば、歴史問題をめぐる争いには過去の清算以上の意味合いがある。中国は戦争中の日本の残虐行為に焦点を当てることで、安倍政権の軍備増強や地域の覇権国家を目指すという野心を打ち砕きたい。日本の戦争犯罪について語れば、中国の軍事力拡大と地域の覇権に対する野望を正当化し、注意をそらすこともできる。

とはいえ「中国の指導部は『歴史カード』の限界も分かっている」と、中国政治に詳しいジャワハルラル・ネール大学のスリカンス・コンダパリ教授は言う。「チベット族やウイグル族が後に、同じような問題を指導部に突き付けるかもしれないからだ」

一方、ドイツが習のホロコースト施設訪問を拒んだ理由は、中国と日本の小競り合いに巻き込まれたくないからだけではない。ドイツ自身が今、過去から「卒業」し、前へ進もうとしているのだ。

先日はシュタインマイヤー外相がフランスやポーランドの外相と共に、混乱するウクライナ情勢の収束のために仲介役を買って出た。また内戦状態に陥った中央アフリカ共和国の治安回復のために派兵も検討するなど、ドイツは必要以上に臆することなく国際社会の前線で役割を果たそうとしている

さらに、先週イスラエルを訪問したメルケル首相は、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植について「大きな懸念」を表明し、ユダヤ人の耳に痛いことも言う厳しい姿勢を示した。ドイツ訪問で過去を語りたい習にとっては幸先のよくない話だ。

「メルケルはこれまで中国の人権問題を堂々と指摘してきた。中国政府の抗議を押し切ってダライ・ラマ14世との会談も行った」と、デービスは言う。「中国がナチスの帝国主義や人種差別政策について議論したいというのなら、メルケルは自国の過去から得た教訓を中国に説いてやることができるだろう」

ニューズウィーク 2014.3.11