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2012/04/21

ミサイル危機に慰安婦問題を絡めた朝日新聞

「北朝鮮ミサイル―騒動の本質を見失うな」というのが今日の朝日新聞の社説のタイトルなのだが、2chでは「北朝鮮ミサイル騒動…慰安婦問題で足踏みしてしまった日韓関係を、もっと緊密にできてれば、今回の混乱防げたかも」というスレタイでスレッドが立った。度々強引なタイトルの書き換えも行われる2chのスレタイだが、これは2chの記者の方が内容にふさわしいタイトルを選んだとしか言いようがない。

北朝鮮がミサイルが試射した。その一部始終をモニターしていたのは(まだ米国本土には届かないにも関わらず)米国の偵察衛星である。ミサイルが発射されてから着弾するまでの時間は、米国本土の場合は30分ぐらいの余裕があるのに対し、日本には数分で命中するらしい。

朝日新聞は「米軍の早期警戒衛星を、日本も持つべきだ」という考えに対して、「どうにも筋違いだ」と苦言を呈する。警戒衛星を持たない日本の探知能力では、発射されたミサイルが水平線より上に出ないと探知が出来ない。これによって更に貴重な時間が失われる。しかし朝日新聞は「今回のミサイル騒動の本質は、日常的な外交の問題」だと言い、「何のことはない」「情報を扱う人間の問題なのだ」とリラックス・ムードである。

東日本大震災から、まだたった一年。来るべき東海地震を想定して、津波への警戒を呼びかける報道が相次いでいる中、和歌山県では津波を想定した対策プログラムを作成したが、津波到着時間までに住民を安全な場所まで避難させる為に彼らは悪戦苦闘している。避難のタイムリミットは、和歌山県の南部では6分しかない。たまたまだがノドン・ミサイルの飛来時間と変わらない。和歌山県ではこの時間を住民の生死を分ける(津波の)タイムリミットとして深刻に捉えているが、朝日新聞は日頃のコミュニケーションが大事、(ミサイルの)早期警戒の為に多額の税金を費やすのは愚かだと言う。

もちろん費用対効果というものがあるから、いくらかかってもいいから警戒衛星を持てとは言えないが、和歌山県も5300億円と見積もられる津波対策のインフラ整備費が現実的でないと認めつつ、やれる所まではやろうという意気込みである。その中には、津波避難タワーのコスト縮減も課題に上げている。

住民の連携やコミュニケーションも確かに大事だが、はじめからインフラ整備を放棄(否定)して、日頃の近所付き合いの大切さばかり強調する空論(「韓国との情報交換を円滑に進めるなど、できる対策から進めることこそ必要だし、効果的だ」)。たしかに、一昔前までは「有事を想定すること=軍国主義」的なムードがあったが、朝日は相変わらずである。

しかも、慰安婦問題でゴネているのは韓国の方なのに、まるで日本が悪いかのような口ぶり。それを慰安婦騒動を引き起こしたの当の朝日新聞が言っているのだから呆れる。

ようするに、朝日新聞は北によるミサイル攻撃はあり得ないと見ているのである(その分析は正しいのかもしれないが)。だからミサイルに対する備えなどどうでもよく、それにかこつけて「偵察衛星は、宇宙の軍事利用」「日韓友好の促進」「軍靴の音が聞こえてくる」「慰安婦に謝罪と賠償を」といった日頃の主張を繰り返しているだけなのである。

実に不真面目かつ不謹慎である。



北朝鮮ミサイル―騒動の本質を見失うな

北朝鮮の事実上のミサイル発射失敗をめぐって、政府の対応が混乱した。野党に追及され、政府は検証を進めている。

一方で、お粗末な事態の再発を防ぐため、発射を探知した米軍の早期警戒衛星を、日本も持つべきだとの声が政府内から出ている。

一連の議論は、どうにも筋違いだと言わざるをえない。

今回のミサイル騒動の本質は、日常的な外交の問題であると認識すべきだ。

確かに、政府の初動はぶざまだった。韓国国防省が発表し、米韓両国のメディアが速報しているのに、首相官邸の第一報は「発射を確認していない」。緊張感に欠け、誤解も招いた。

米軍から発射情報を伝えられたが、日本のレーダー網でとらえる前に落下したため、うまく対処できなかったという。

何のことはない。システムの不備というより、情報を扱う人間の問題なのだ。経緯を検証するのは当然だ。

だが、これをもって開発費を含めて数千億円規模とされる早期警戒衛星を持つべしと唱えるのは、どうみても論理の飛躍だ。北朝鮮への対応を口実にした、過剰な要求でしかない。

むしろ、韓国との情報交換を円滑に進めるなど、できる対策から進めることこそ必要だし、効果的だ。

日韓両国はいまだに、やりとりした軍事情報を保護する協定を結んでいない。今回、韓国から発射情報が提供されなかったのはこのためだ。昨年1月の日韓防衛相会談で、協定の必要性を確認しあったのに、慰安婦問題などで足踏みしてしまった

つまり、ふだんの外交努力で日韓関係をもっと緊密にできていれば、今回の混乱は防げたかもしれなかった。

もうひとつ、自衛隊の身構え方も気になった。

ミサイル防衛の地上部隊を首都圏と沖縄県に、イージス艦を日本海と東シナ海に配備した。ミサイルの上空通過が見込まれた宮古・八重山地区には数百人の自衛隊員が展開した。

政府が万全の態勢をとるのは自然なことだが、地元などからは「落ちてくるミサイルを本当に防げるのか」という、システムへの不信の声も上がった。

中国をにらんだ南西諸島の防衛力強化のための布石だ、との批判も出ていた。

ミサイル防衛には約1兆円が投じられてきた。それに見合う国民の理解も、生かすための周辺国との関係強化もまだまだだ。この現実こそ、政府は今回の騒動の教訓とすべきだ。

朝日 2012.4.21