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空襲訴訟 「無補償は差別と言えぬ」
東京大空襲訴訟 控訴審も原告敗訴
一九四五年三月の東京大空襲で被災した民間人や遺族ら百十三人が、国が補償などの救済をせずに被害を放置したのは違憲だとして総額十二億四千三百万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟の控訴審の判決で、東京高裁は二十五日、訴えを退けた一審東京地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は最高裁に上告する方針。
原告側は「国が旧軍人や原爆被害者らを救済しながら、空襲被害者には生活援助や補償をしないのは法の下の平等に反する」と主張。国側は「戦争損害は国民が等しく受忍(我慢)しなければならない」と反論していた。
鈴木健太裁判長は「大空襲によって多大な苦痛を受けた原告らが、救済や補償措置を受けている旧軍人らとの間の不公平感を感じることは心情的には理解できる」と述べた。
だが、国から危険性の高い戦闘への参加を命じられた旧軍人などに対する補償には、合理的な理由があると指摘。「空襲被災者を含め補償を受けていない戦争被害者は数多くいる。被害の原因や程度はさまざまで、補償されていないことで差別されているというのは困難」と判断した。その上で、一審同様に空襲被害者を救済するかどうかは国会の裁量の範囲内と結論づけた。
原告は慰謝料など一人当たり一人千百万円の損害賠償と、追悼施設建設の約束を含む謝罪文交付を国に求め、二〇〇七~〇八年に提訴。東京地裁は〇九年十二月、訴えを棄却した。
<東京大空襲> 1945年3月10日未明、米軍の爆撃機B29約300機が江東、墨田、台東各区など下町地域を無差別爆撃。約10万人が死亡し、100万人以上が家を失った。同年4、5月に東京全域を襲った4度の「山の手空襲」も含め、東京では100回以上の空襲が繰り返された。
東京新聞 2012.4.26