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2013/08/05

産経の「性奴隷でない」は反論として有効か?

「強制性の有無」「性奴隷か否か」そういった議論に付き合う必要はない

保守系には迂闊な議論が多い。これが国際社会に誤解を与え、反日勢力を喜ばせている。こういう人たちは簡単に相手の土俵に乗る。一方、彼らの敵は論点をすり替え自分の土俵に引き込もうとする。そして多くの場合それに成功している。

勝算が乏しい軍隊は自分に有利な地形に相手を引き込もうとする。強制連行(徴用)の有無を巡る議論が戦時中ならどこにでも見られた「強制性」の有無に話をすり替えられたのも、敗色濃厚な側が議論の土俵を変えようとしたに過ぎない。英語ではゴールポストを動かすという言い方がある。話を逸らそうとする相手には、誤魔化すなと一喝するだけでいいのに、ノコノコ相手のペースにはまる粗忽者が今も後を絶たない。

日本を貶めるために「性奴隷(sex slave)」という言葉が使われているのも事実だが、当時の公娼と同じだから性奴隷ではないと言うのは、またも相手のペースに乗せられた議論である。なぜ自分たちの事は棚に上げ日本にだけこうした毒々しい言葉を使うのかと言い返せばいいのに。

慰安婦にも義務教育にも「強制性」はある。当時の公娼も慰安婦も性奴隷(sex slave)と呼ぼうと思えば呼べる。Sex slaveという言葉は、かなり広い意味で使われるのである。性奴隷という言葉に拘ることで、またしても泥沼に嵌るのではないか?産経新聞にはもう少し緻密な理論を期待したい(橋下大阪市長も性奴隷という言葉に拘っている)。

河野談話20年 偽りの見解を検証し正せ 慰安婦は「性奴隷」ではない

いわゆる「従軍慰安婦」の強制連行を認めた河野洋平官房長官談話の発表から20年たった。この間、事実誤認が明らかになり、強制連行説は破綻した。しかし、談話は見直されないまま存続し、今も日本の近隣外交を縛り、教育現場に深い傷痕を残している。

安倍晋三政権は、早急に河野談話を検証するとともに見直しに着手すべきだ。

河野談話は宮沢喜一内閣が退陣し、細川護煕氏が首班の非自民6党連立政権が発足する直前、平成5年8月4日に出された。

◆「強制連行」裏付けなし

談話は「従軍慰安婦」という戦後の造語を使い、その募集について「官憲等が直接これに加担したこともあった」と日本の軍や警察による強制連行を認める内容だった。河野氏も会見で「強制連行」があったと明言した。

しかし、それまで宮沢内閣が約1年半かけて内外で集めた二百数十点に及ぶ公式文書に、強制連行を裏付ける資料は1点もない。

根拠とされたのは唯一、発表の直前、日本政府がソウルで行った韓国人元慰安婦16人からの聞き取り調査だけだった。証言の信憑(しんぴょう)性の調査も行われていない。

この事実は後に、河野談話にかかわった石原信雄元官房副長官の証言で明らかになった。

にもかかわらず、歴代内閣は河野談話の検証を怠り、放置した。河野氏が強制連行を認めるもとになった韓国人元慰安婦の「証言」なるものも、国民には知らされていない。河野談話に基づく慰安婦強制連行説が、今なお国際社会で独り歩きしている。

5月末、国連拷問禁止委員会が慰安婦を「日本軍の性奴隷」と表記し、元慰安婦への補償と関係者の処罰を求める勧告を出したことにも違和感を禁じ得ない。

「性奴隷」は、慰安婦が奴隷狩りのような手段で集められた印象を与える。欧米の多くのメディアが、この言葉を意図的に使っているとしたら問題だ。

戦時中、山口県労務報国会下関支部動員部長だったという人物が「自ら韓国の済州島で慰安婦狩りを行った」と述べ、国連人権委員会の報告に取り上げられたが、現代史家の済州島での現地調査で、「告白」は嘘と分かった。

戦地慰安所の生活条件は、当時の遊郭とほとんど変わらなかったことが、学問的にも確かめられている。慰安婦は決して「性奴隷」ではない。不当な日本非難に、きちんと反論してこなかった外務省の責任も重い。

慰安婦問題は、知日派といわれる外国の人たちにも十分に理解されていない面がある。

シーファー前駐日米大使は5月にワシントンで開かれた日米関係に関するシンポジウムで、安倍政権の閣僚の靖国神社参拝には「(戦没者に)敬意を表したいという感情は理解できる」と述べる一方、河野談話の見直しは「米国における日本の利益を大きく害することになる」と指摘した。

◆知日派にも誤解広がる

アーミテージ元米国務副長官ら超党派の外交・安全保障専門家グループも昨夏、「日本は韓国との歴史問題に正面から取り組むべきだ」と忠告した。

安倍首相は、菅義偉官房長官の下で有識者から意見を聴く考えを表明している。石破茂自民党幹事長も、テレビ討論番組で「慰安婦問題、侵略の問題は検証していくことが必要だ」と語っている。

ただ、日本維新の会共同代表、橋下徹大阪市長の慰安婦問題に絡む「風俗業活用」発言などが国際社会でも批判されたことは、記憶に新しい。慎重に手順を踏んで検証作業を進めてほしい。国会も、河野氏や石原氏らを招致して、直接経緯を聞く必要がある。

第1次安倍内閣は19年、「政府が発見した資料には、軍や官憲による強制連行を直接示す記述はない」との答弁書を閣議決定した。これは現時点での日本政府の共通認識として、在外公館が繰り返し発信していかねばならない。

河野談話は、教育現場にも計り知れない悪影響を与えた。

多くの教科書に慰安婦をめぐる自虐的記述が登場している。「新しい歴史教科書をつくる会」の発足などで、極端な記述は減る傾向にあるが、十分とはいえない。

日本の未来を担う子供たちに間違った不名誉な歴史を伝えないためにも、河野談話の誤りは正す必要がある。

産経 2013.8.4