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2014/01/08

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慰安婦像、揺れる日系人 相次ぐ計画、抗議と支持と 米カリフォルニア

従軍慰安婦の像や碑の設置や計画が相次ぐ米カリフォルニア州で、日系人社会が揺れている。猛反発して抗議する日本人や日系人がいる一方、一部の日系人は戦時中の強制収容の苦い記憶を挙げ、「同じ戦争被害者」として心を寄せる。

 ロサンゼルス近郊のグレンデール市の市議会議場。7月9日、多くの日本人や日系人が傍聴席を占めた。

 韓国系団体が求めた慰安婦の像の設置を認めるかどうかの採決直前。「慰安婦は韓国のでっち上げ」「強制の証拠はないはず」「日本だけの問題ではない」。代わる代わる発言に立ち、否決を求めた。地元在住の元通信社記者の日本語新聞を通じた抗議の呼びかけに応じ大挙して詰めかけたのだ。「抗議のしずくが津波となった」とロサンゼルス・タイムズ紙は表現した。

 だが、結果は4対1で可決。「日本を責める像ではない。13~14歳の少女が慰安婦となった悲劇と戦争の恐ろしさを伝えるためだ」(ローラ・フリードマン市議)との意見が勝った

 30日に開かれた像の除幕式では姿を見せた日本人や日系人は数人のみ。韓国系住民らがこぞって記念撮影するなどしたのとは対照的に、遠巻きに見守った。「市議会でも何を言っても無駄だった、とみんな言ってました」。設置に反対した日系3世の元エンジニア小野田正之さん(68)は言った。

 一方で式典では2人の日系人が壇上に立ち、設置を支持した。祖父母が日系人強制収容所で亡くなったというマイク・コダマさんは「日系も韓国系も同じ米国人」。3世のキャシー・マサオカさん(65)は「歴史を否定する人とは違う見方をしていると言いたくて、ここへ来た」。米政府に強制収容への謝罪と償いを求めて長年活動してきただけに、元慰安婦たちにも共感するという。「謝罪と償いを重ねることは、被害者の癒やしになる」と話した。

 ■増える韓国系、設置後押し

 世界最大のコリアタウンを擁するロサンゼルスの近郊では、ほかにも慰安婦の碑などの話が持ち上がっている。マイク・ホンダ下院議員が主導した2007年の下院決議が後押しし、韓国系人口が増えるに従って草の根的に運動が広がる。

 アーバイン市は数カ月前に市長が韓国系団体と会談。市議会に諮るかどうか、検討が続いている。ブエナパーク市でもブラウン市議が9月以降、設置案を議会にかけるかどうか検討中だ。市議会は7月23日、設置検討の議論の打ち切りをいったん決定。日系人に配慮したとみられるが、一方で韓国系のロビー活動も無視できないようだ。

 これらの市でも議論が進めば、日本人や日系人の抗議活動が再び盛り上がる可能性がある。一方で「抗議すればするほど碑を作ろうとする運動は強固になる」(マサオカさん)との指摘もあり、呼応して設置の計画自体も増えかねない。

 多くの日系人は日系社会の分断を恐れてか、沈黙を守っている。米国で最古最大の「日系アメリカ人市民同盟」も「何の立場もとらない」と答えた。

 (ロサンゼルス=藤えりか)

 ◆キーワード
 <カリフォルニアの日系人と韓国系> 2010年の米国勢調査によると全米の日系人は約130万人。19世紀末以降に多くの移民が移り住んだカリフォルニアが最多で、約27万人。韓国系は全米約170万人で、最多のカリフォルニアは約45万人。

朝日 2013.8.8