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2014/10/25

第三者委員会から排除された「慰安婦問題のプロ」 同志ねじ込もうと


過去の報道を検証する為に朝日新聞が立ち上げた第三者委員会。そこには、運動家たちの気に入る人間は含まれていなかった。運動家たちが同志と頼りにする朝日新聞であるが、「慰安婦問題のプロ」をメンバーに入れるほど愚かではない。そこで彼らは仲間を集めてアピールすることにした。大森典子は「第三者委員会は国際社会の観点を意識して議論するべきだ」と言い、林博史は「最新の研究成果を検証に盛り込むことができない」とケチをつけている。

大森典子

彼らの言い分はようするに、東電社員が福島第一原発から逃げ出したという(誤)報道を検証するのに、脱原発を意識して議論すべきだなどと言っているようなものである。こんな連中の言うことをNHKが報じる必要はあるのだろうか?彼らの為に大きなスペースを割いた神奈川新聞は彼らのシンパである。

朝日新聞の第三者委員会は国際社会の観点を意識して議論するべきだ。なのに、国際的な人権問題に関わった法律家や人権団体の専門家がいない。・・・7人の委員のうち女性が1人しかいないのもアンバランスだ。(大森典子

朝日新聞の慰安婦報道を検証する第三者委員会に、慰安婦問題の調査研究を正確に把握している専門家を加えることが必要だ。7人の委員はそれぞれの分野の専門家だが、慰安婦問題への研究業績のある人がいない。なぜ入れていないのか不思議に感じている。これでは最新の研究成果を検証に盛り込むことができない。(林博史

朝日が第三者委員会に要請したのは、〈1〉吉田証言をはじめとする過去の記事の作成経緯と、記事取り消しまでに長い時間を要した理由〈2〉記事を取り消した8月5、6日の特集記事の評価と、ジャーナリストの池上彰氏のコラム掲載を見送った問題への対応〈3〉国際社会に対する報道の影響・・・の3点。これに、女性メンバーが1人しかいないことがどう関係するというのか。「慰安婦問題のプロ」を排除した朝日新聞だが、彼らが「今後も慰安婦問題を報じ続けるとした朝日新聞の姿勢を評価した」と書くあたり、四面楚歌の中、それでもちょっぴり嬉しかったのかもしれない。7名の委員以外にも秦郁彦木村幹が専門家としてアドバイザーに指名されているのだが、排除された林らのグループは、彼らの存在を認めるつもりはないのだろう。

研究者らの団体、第三者委に要望 朝日新聞の慰安婦報道検証めぐり

朝日新聞が慰安婦報道について検証する第三者委員会を設置したことについて、慰安婦問題に取り組んできた研究者や弁護士の有志グループ(呼びかけ人=林博史・関東学院大教授ら7人)が9日、慰安婦問題について専門的な学識のある研究者らを委員に加えるよう求める要望書を提出した。要望書の宛先は、朝日新聞社の木村伊量社長と、同委員会の中込秀樹委員長。今後も慰安婦問題を報じ続けるとした朝日新聞の姿勢を評価したうえで、第三者委員会の女性委員を増やすことや、国際人権機関に関わった法律家の提言を聞くことを求めている。

朝日 2014.10.10



時代の正体(35) 歴史と向き合う 慰安婦報道問題

朝日新聞が旧日本軍の従軍慰安婦に関する一部記事を撤回した問題が波紋を広げている。研究者からは「慰安婦を強制連行したとする『吉田証言』が虚偽だったとしたことで『慰安婦問題自体が朝日の捏造(ねつぞう)だった』という誤った主張が広がっている」との懸念が示される。一方、自社報道の検証のため設置した第三者委員会のあり方にも疑問の声が寄せられ、「近年見つかった資料も踏まえて検証し、報道してほしい」との指摘がなされている。研究者らが開いた会見の発言を紹介する。

◆国際社会と認識にずれ 大森典子・弁護士

吉田証言に関する記事の取り消しは国際社会の慰安婦問題に対する認識に影響を与えていない。強制連行があったかは関心の外だからだ。国際社会は強制連行の有無ではなく、連行後に女性たちがどう扱われたかを重視している。

慰安所に入れられた女性は、日本軍の管理下で監禁状態にされた性奴隷であり、深刻な人権侵害を受けたことが問題であると受け止められている。

そうした認識に基づいてさまざまな人権機関が日本政府に対して謝罪と賠償を求める勧告を行い、米下院やEU議会でも決議がなされた。強制連行があったか否かが議論されてきた日本と国際社会の間には認識の大きなずれがある。

戦時下の性暴力については、国際社会で関心の高いテーマになっている。安倍晋三首相も9月に国連で行った演説で「女性に対する人権侵害のない世界にしていく。日本は紛争下での性的暴力をなくすため、国際社会の先頭に立ってリードしていく」と演説した。国際社会は慰安婦問題に対して、日本がどう対応していくのかを注視している。

朝日新聞の第三者委員会は国際社会の観点を意識して議論するべきだ。なのに、国際的な人権問題に関わった法律家や人権団体の専門家がいない。慰安婦問題がいくつもの国際法・国内法に違反し、国際人権機関で取り上げられていることを考えると、この顔触れは問題。7人の委員のうち女性が1人しかいないのもアンバランスだ

◆教育や研究、行いにくく 中野敏男・東京外国語大学大学院教授

いま、慰安婦問題を考えるため被害者を招いて話を聞く機会を設けようと思っている。どんな問題でも当事者から直接話を聞くことが重要だと考えるからだ。だが、朝日新聞が慰安婦に関する記事を取り消してから、社会の雰囲気ががらりと変わった。慰安婦に関する教育や研究自体が行いにくくなっている。

理由は、さまざまなバッシングが慰安婦問題そのものがなかったかのような誤った認識に基づいてなされているためだ。特に朝日が記事を取り消してから激しくなり、その矛先は慰安婦問題に詳しい研究者にも向けられている。

朝日の問題が持ち上がっていなかった4月にも兆候はあった。広島大の授業で慰安婦問題を扱うドキュメンタリー映画を題材にした授業が行われた。学外から「内容が一方的だ」と抗議が相次ぎ、インターネット上には教員への中傷が相次いだ。

こうしたことが続けば、慰安婦問題を研究し、教育することに抑制がかかりかねない。大学は真実を追究する場だ。

慰安婦問題そのものがなかったかのような言葉はあちこちで発信されており、このままでは事実に基づかない認識が学生の常識のベースになりかねない。

専門的な研究成果が世の中に知られていないのは残念だ。研究者ももっと事実を発信しなければならないと感じている。研究に基づいた正しい認識が社会に共有されてほしい。

◆検証に研究成果 反映を 林博史・関東学院大教授

吉田証言は虚偽だということは研究者の間では常識だった。だから報道が取り消されたことに何の驚きもない。

慰安婦の研究者は、河野談話が出された1993年以降もさまざまな資料を発掘し、集めてきた。日本軍や日本政府の文書、被害者の証言、兵士がつづった戦記や回想録、各国政府の文書もあり、その数は500点にも上る。

慰安婦に対して、暴力的な連行を示す文書が数多く発見され、慰安所に入れられた女性たちが深刻な性暴力にさらされ、重大な人権侵害があったことが明らかになっている。これらの研究は吉田証言に全く依拠していない。

重視すべきは、被害者が逃げることができず、毎日何十人もの相手をさせられたことで、人権の問題だ。

朝日新聞の検証記事では、20年来の研究で明らかになってきた事実への言及が断片的だった。慰安婦問題について正面から取り上げ、社としてどう考えているのか、積極的にきちんと示してほしい。そうしなければ、逃げ腰の報道になってしまう。

「慰安婦問題そのものが捏造」とする明らかな誤りの意見、「朝日バッシング」が続いている。こうした主張に毅然として対応し、誤解を生まないためにも、研究に基づく事実を報道してほしい。重大な人権侵害があった、ということを紙面で伝えるべきだ。

吉田証言は1982年に初めて朝日新聞で記事になった。30年前のことだけを検証するのでは不十分だ。

朝日新聞の慰安婦報道を検証する第三者委員会に、慰安婦問題の調査研究を正確に把握している専門家を加えることが必要だ。7人の委員はそれぞれの分野の専門家だが、慰安婦問題への研究業績のある人がいない。なぜ入れていないのか不思議に感じている。これでは最新の研究成果を検証に盛り込むことができない。

神奈川新聞 2014.10.21