2018/03/15

本岡昭次「慰安婦問題の国際化は私から」


慰安婦問題は、いつ始まったのか?これは鎌倉幕府の成立はいつか、という話に似ている。「1192(イイクニ)作ろう鎌倉幕府」と覚えた人も多いはずだが、鎌倉幕府の成立年について学者の見解は一致していない。なにをもって幕府の成立と見なすべきか、様々な意見があるからである。

慰安婦問題についても、その始まりをどの時点と特定するのは難しい。韓国では金学順がカムアウトした8月14日(1991年)を慰安婦記念日に制定しているし、日本のネットではもっぱら朝日新聞が捏造したなどと言われているが、むしろ発火点は社会党の本岡昭次としておくのが適当ではないかと思われる。なにより本人が、そうだと公言している。正確には、彼の国会での質問に対する日本政府の回答が発端だと言っているのだが、実質同じことである。(『朝鮮人強制連行調査の記録 兵庫編』)

国会で初めて「強制連行」問題が取り上げられたのは一九九〇年六月六日の参議院予算委員会であった。このとき質問に立った私は、朝鮮人強制連行問題と関連してその一形態でもある「従軍慰安婦」問題に触れて質問したが・・・これが、「慰安婦」問題を国際問題化させる発端となったのである。

本岡が「強制連行」の違法性の根拠として、日韓併合無効論を持ち出している点は大事である。つまり、本岡は「強制連行」という言葉を拉致や誘拐という意味ではなく、日本政府による徴用という意味で使っており、日本政府が日本人を徴用するのは合法でも、外国人である朝鮮人を徴用(強制連行)したのは不当だったのではないか、と主張していたのである。当時の国会でのやり取りも、日本政府による労務動員という文脈になっている。この時代、(朝鮮人)強制連行とは、そういう意味の言葉だったのである。

本岡昭次: 大変なことですね、法令によって強制連行しておきながら、何人だったかわからぬというのは。これ、どうにもならぬじゃないですか。[...] この強制連行の方式は、募集それから官あっせん、一般徴用令、軍による強制、女子挺身隊、勤労動員令、徴兵制というふうなものがあるというふうになっておるんですが、このとおりですか。


本岡昭次: それから、強制連行の中に従軍慰安婦という形で連行されたという事実もあるんですが、そのとおりですか。

政府: 先ほどお答え申し上げましたように、徴用の対象業務は国家総動員法に基づきます総動員業務でございまして、法律上各号列記をされております業務と今のお尋ねの従軍慰安婦の業務とはこれは関係がないように私どもとして考えられますし・・・

同上

日本人の徴用は合法だが、日本政府には
朝鮮人を徴用する法的権限はなかった?

韓国では現在徴兵制が敷かれているが、もしも例えば韓国政府が日本国籍者まで徴兵し戦場に送り込んだらどうなるか?日本政府は自国民の開放を要求し、日本人”被害者”は韓国政府に賠償を求めるだろう。「慰安婦強制連行」の有無を巡る議論とは、本来そういう文脈で出発したのである。だから、日本人慰安婦は議論の対象から外されていたのである。



国会で初めて「強制連行」問題が取り上げられたのは一九九〇年六月六日の参議院予算委員会であった。このとき質問に立った私は、朝鮮人強制連行問題と関連してその一形態でもある「従軍慰安婦」問題に触れて質問したが、政府側は「民間業者が、軍とともに連れ歩いている……。調査して結果を出すことは……できかねる……」と答弁し、これが、「慰安婦」問題を国際問題化させる発端となったのである。この国会での質疑応答を境に南北朝鮮から元「慰安婦」の女性たちなどの告発があいつぎ、それが「慰安婦」問題をの場に持ちこむところまで発展していったのである。

・・・この問題に対する論議が幅広く、継続的になされ、今年五月の国連人権小委員会現代奴隷制作業部会では、「慰安婦」問題ばかりか強制労働問題も取り上げていくことになった。・・・

一方・・・オランダのNGOであるIFOR(国際和解団体)が、日本の朝鮮支配の根源となった一九〇五年の「韓国保護条約」(第二次日韓協約)について、すでに一九六三年の国連国際法委員会において、効力を発生しなかった条約の一つであることが確認されていたことを明らかにした。

私は、今年の三月二十三日の国会参議院予算委員会で、先のIFORが「一九〇五年条約が効力を発生していなかった」として文書提出したことをふまえて政府の見解を質した

私かその場で問題にしたかったことは、日本政府が主張する、朝鮮植民地支配は「有効」「合法」であるから、朝鮮人強制連行、「慰安婦」問題もすべては「適法であり、したがって「補償の義務はない」という誤った姿勢についてであった。

日本の朝鮮支配合法化の根源となった一九〇五年の「韓国保護条約」は、実際には朝鮮の外交権を奪う条約であった。この条約はこれまで、当時の大韓帝国皇帝高宗が締結を拒否したので、日本側が武力で強制締結させたとされてきた。ところが昨年の五月、ソウル大の奎章閣から発見された大韓帝国側条約原本によれば、同条約には、条約締結の必要条件である最高権力者としての高宗皇帝の同意がなく、署名、捺印もない上に、調印した外部大臣への委任状すらなかったことが明らかになった。以来、南北の歴史学者によってこの条約が正式に締結されていないばかりか、当時の国際慣習法に照らしても効力を発生させていなかったとする主張が展開されている。

これが事実であったとすれば、日本政府の言う朝鮮人強制連行、「慰安婦」問題は「適法」であったとする論理が根本から崩されることになるのである。(以下略)


一九九三年九月
兵庫県朝鮮人強制連行真相調査団日本人側団長
本岡 昭次

『朝鮮人強制連行調査の記録 兵庫編』
朝鮮人強制連行真相調査団 編著 柏書房 p.3~p.5 (全文


5 件のコメント:

  1. >これが事実であったとすれば、日本政府の言う
    >朝鮮人強制連行、「慰安婦」問題は「適法」で
    >あったとする論理が根本から崩されることにな
    >るのである。(以下略)
    6ヶ月経つと自分の発言を忘れたのか、嘘を書いてますね。適法か違法かは「歴史的な真実を学問的に解明していく」問題で、現実的には有効だったと本岡昭次氏本人が国会で認めています。日韓基本条約第2条を否定していると「誤解」しないでくれとまで言っている。

    渡辺美智雄外相が日韓基本条約第2条の「既に無効」は基本条約発効した時に無効となったと説明し本岡氏は認めた。日韓基本条約がある以上、日本政府の論理が根本から崩れることはない。議事録を読むと、国会での質問では【併合条約が無効だから徴用が強制連行になる】という議論にはなっていないようです。

    ○国務大臣(渡辺美智雄君)
    (略),そこでこの協定ができた瞬間に、もはや今までの日本と韓国の間のいろんな条約とか協定はもう既に無効であるということを言ったわけですよ。既に無効。そのときからということであって、その辺が妥協の産物と言ってはしかられるかもしらぬが、そういうことで十数年の交渉に終止符を打ったという現実があるわけです。したがって、それを否定するというわけにもいかないですね、これは。(略)
    ○本岡昭次君 まあ外交とか政治的な妥協とか国と国の関係とかいったようなものは、外務大臣のような立場でそれはやらなければならないことがあるでしょう。しかし、歴史上における真実とか事実というのは一つでありまして、そしてそのことを学問的に解明していく、あるいはまた不幸な過去とは何であったんだということを両国民が正しく認識するということは、私は別だと思うんですよ。私は正しく認識する必要があると言っておるんですよ。歴史的な妥協はわかっております。だから私は、韓国に対して先ほど言ったように、新しい関係でさらに強力な日韓関係をつくっていかにゃいかぬ、そのためにはという立場で物を言っておるつもりなんですが、誤解のないようにしてください。

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    1. 併合が国際法上違法だったと日本政府が認める事で、道徳的に韓国と対等になると本岡氏は最後に主張している。韓国大統領の「物質的補償を求めず道徳的に優位に立つ」という発言を引いていることから、彼は慰安婦問題でも補償は求めていなかったことになります。まぁ、この大統領にも本岡氏にも日本国民は騙されちゃったわけですか。

      平成5年3月23日参議院予算委員会
      ◯本岡昭次君 総理に最後に伺っておきます。
       歴史の真実を認めない者は再び同じ過ちを繰り返す、こう言われております。今、本当にその歴史の過ちを認めた上で妥協したのかという問題が必ず問われると私は思うんです。
       金泳三大統領が、この従軍慰安婦問題の解決について日本に物質的な補償は求めない、そのことによって今後は道徳的に優位に立って新しい韓日関係の定着に向かうことができると発言されました。ある新聞は、社説で「日本の道義が試されている」と政府の誤りなき対応を求めました。
       私は、日本の朝鮮半島植民地支配が道徳に反する行為であり、国際法上違法であったというこのことを認める勇気のない限り、日本が韓国に対して道徳的に、優位とは言いません、対等の立場に立って新しい日韓関係を築くことができないのではないかと私は考えているんです。総理のお考えを最後にお聞かせください。

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    2. いつもありがとうございます。

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  2. こちらのエントリと関係ないのですが

    韓国の裁判所がはじめて、米軍兵士に対する
    「慰安婦」の売春を国が奨励したという判決を下した
    Sputnik日本 2018年03月22日 17:16
    https://jp.sputniknews.com/opinion/201802164588182/
    と、ハザマさんはもうご存知かもしれませんが
    まあ、韓国の裁判所の判決は情緒法といわれるくらいで
    時の政権の意図として、北との統一のために
    在韓米軍を追い出したいという願望があると思われ
    そこを忖度そんたく(笑)した裁判所という構図なのですかね?

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    1. 裁判所の忖度かは分かりませんが、日本軍慰安婦問題に比べればニュースの扱いは小さいようですね。

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