朝日新聞社に「良心的」な学者らが乗り込んで来た。同社が昨年末、謹んでお受けした第三者委員会の報告書について、一部の政治勢力の見解に沿った物だと苦情を言いに来たそうである。彼らは、報告書が出る前から自分たちにとって望ましい人間が委員に選ばれなかったことに不平を言っていた。ところで、彼らが言う「政治勢力」とは誰のことなのか。報告書は、朝日の吉田証言報道が国際社会に影響を及ぼしたかについて肯定的ではなかった。少なくとも彼らが目の仇にする右派の見解とは必ずしも一致していないのだが・・・。
林博史らは、朝日新聞が多様な意見を紙面で取り上げることを警戒している。つまりは、これまでの通りの朝日新聞でいてくれということらしい。朝日新聞は、こういう連中と縁を切らねば健全な報道機関には戻れないだろう。しかし、検証委員会からこういった「プロ」を排除するといった英断を下して見せた朝日だったが、写真入りで記事にするあたり、まだ未練があるようである。
第三者委報告書、研究者ら批判 慰安婦問題「本質否定」
慰安婦問題に取り組む研究者や弁護士らのグループ(呼びかけ人=林博史・関東学院大教授ら8人)が22日、朝日新聞東京本社を訪れた。朝日新聞の慰安婦報道を検証した第三者委員会の報告書と、報告書を受け朝日新聞社が発表した「改革の取り組み」に対し「重大な問題がある」と批判。「人権侵害である慰安婦制度の研究成果を踏まえ、正面から報道してほしい」と申し入れた。報告書に対する編集部門の見解や今後の慰安婦報道のあり方について、文書で回答を求めた。
第三者委の報告書について「『強制性』を強調する朝日新聞の議論を『議論のすりかえ』と否定することは、慰安婦問題の本質を否定し、一部政治的勢力の見解にそった結論」と批判した。報告書を受けた朝日新聞社の対応について「女性の人権の視点を欠落させ、ただ多様な意見を紹介するのでは、むしろ問題の本質から目を背けようとするもの」と懸念を示した。
このグループは第三者委が発足した昨年10月、慰安婦問題に専門的な学識のある研究者らを委員に加えるよう求める要望書を朝日新聞社社長や第三者委の委員長あてに提出している。
朝日 2015.1.22
追記: 「テープもとらずメモもたいしてとっていなかった。あれできちんと報告できるのか」朝日新聞側の対応は冷たかったようである。
「慰安婦第三者委」報告に「重大な問題」――『朝日』に研究者ら申し入れ
日本軍「慰安婦」問題に取り組む研究者や弁護士ら8人が呼びかけ人となり1月22日午前、『朝日新聞』東京本社を訪れた。昨年12月22日に同社が発表した〈「慰安婦」報道に関する朝日新聞社第三者委員会報告書〉に「重大な問題」があるとして申し入れたのである。
午後の会見で林博史・関東学院大学教授は「国際法の専門家がいない」「委員が特定の政治的な主張をしている」「人権侵害された『慰安婦』が攻撃され否定されようとしている」などと指摘。このほか「アジア太平洋に慰安所は置かれた。『慰安婦』問題は日韓の問題だけという狭い視野で絞らないでほしい。女性の人権を侵害する制度をつくって日本軍が運営した責任が問われている」(大森典子弁護士)。「安倍(晋三)首相は国連安保理常任理事国になりたいと言ったが、国連の委員会で議論されている人権問題を無視している。人権の切り口からの批判を『朝日』は今後踏まえてほしい」(田中宏・一橋大学名誉教授)。「(慰安婦)当事者はまだ健在。聞き書きは続いている。第三者委はこの意味を考えてほしい」(内海愛子・恵泉女学園大学名誉教授)。「『慰安婦』問題について授業をすると新聞が取り上げ、文科省が動き大学の授業に介入するという回路が今できかねない状況」(中野敏男・東京外国語大学教授)。「『朝日』の紙面で吉見義明さんや林博史さんの研究がとりあげられなくなり、秦郁彦さんの研究やコメントが全面化することを懸念」(金富子・東京外国語大学教授)。歴史学研究会の久保亨委員長は「(慰安婦が)強制的になされたことは歴史学の常識」「一部のメディアや政府関係者の発言は憂慮に堪えない」と述べた。
また、「編集局の人の同席はかなわず、対応は広報の二人。テープもとらずメモもたいしてとっていなかった。あれできちんと報告できるのか」(大森弁護士)と『朝日』の対応も説明された。