先月の話だが、韓国の裁判所が日本軍の慰安婦になぞらえ米軍の基地村売春婦について韓国政府を批難し、一部損害賠償を命じたとニューヨーク・タイムズが報じた。もちろんこれには、基地村売春婦と日本軍慰安婦(性奴隷)は別物だという記者(CHOE SANG-HUN)の揺るぎなき確信が前提にあるのだろう。その証拠に、この記事を書いた記者は5日後の別の記事の中で「一部の日本の右翼政治家は、慰安婦は単なる売春婦だと言って韓国人を怒らせて来た」と書いているのに、この記事では自ら基地村女性を何度も「元売春婦」と呼んでいる。それを本人はオカシイと感じていない。
実際は、この記事の中にも出ているように、当時の韓国の新聞や国会はこうした女性を「慰安婦」と呼んでいたのである。つまり日本兵を相手にしたのも米兵を相手にしたのも同じだというのが、当時の韓国の常識だったのである。基地村売春婦の中には職業紹介所に騙されたり、借金漬けだったり、あるいは逆に生活の為にその道に入った者もいたというのだったら、「日本軍慰安婦問題」同様「米軍慰安婦問題」も存在するではないかと日本人は思うのだが、ニューヨーク・タイムズの記者にはピンと来ない。なぜなら彼は、日本軍慰安婦を「(日本の)兵士たちが性サービスを強制した朝鮮人他の売春婦女性」と思い込んでいるから・・・。
韓国政府は法に反してアメリカ兵に奉仕する売春婦を持っていた。裁判所が指摘
金曜日、画期的な判決の中で、韓国の裁判所は1960年代と70年代に、アメリカ兵に奉仕する売春婦を拘禁し強制的に性病治療を受けさせたとことで、政府が法を犯したと述べた。
何十人(ダース)もの元売春婦が、韓国政府が基地村におけるgijichonと呼ばれる売春の巨大ネットワークを運営する事に関与したことを認めるよう圧力をかける為に、訴訟を起こした。gijichonでは貧しい韓国人女性がアメリカ軍が頻繁に出入りするバーや売春宿で働いていた。
ソウル中央地方裁判所の三人の裁判官による判決で、女性たちは望んだ(韓国政府による)告白も謝罪も勝ち取ることは出来なかった。
それでも判決は勝利だった。初めて裁判所が政府が不法にgijichonの売春婦を性病の治療の為に強制的に拘禁したと述べ、肉体的精神的被害について57人の原告に各4240ドル相当の賠償金の支払いを命じた。
拘禁と強制治療についてジェオン裁判官は、拘禁と強制治療について「あってはならず、そして二度と繰り返されてはならない人権侵害だった」と、三人の裁判官を代表して述べた。
ジェオン判事は、売春婦たちは「アメリカ軍の慰安婦だった」と、第二次大戦中に自国(日本軍)の兵士たちが性サービスを強制した朝鮮人他の売春婦女性に対して日本人が用いて来たのと同じ婉曲表現を使った。
原告たちも、韓国が日本に対し過去の過ちを責めながら、外国の兵士たちに韓国人売春婦との接触を保証する役割を担った事について認めないのは偽善だと、(日本軍慰安婦との比較)を後押ししながら賠償を迫った。
「あの人たちは私達たちがgijichonに自分から赴いたという。だけど、私たちは職業紹介所に騙され、ポン引きに借金で縛られていた」原告の一人、62歳のパク・ヨンジャは金曜日の判決の後、そう語った。「私はまだ十代だった。休みもなく、毎日5人のアメリカ兵を相手させられた。逃げたら捕まって殴られ、借金を増やされた」。
「私たちを代弁してくれる人はいなかった。私達は国から見捨てられたんです」
訴訟における韓国政府の代表である法務省は、金曜日の判決に直ぐには反応を示さなかった。
1950年から53年にかけての朝鮮戦争の後の貧しい時代、韓国では基地村の売春婦が稼いだドルは貴重な国際通貨だった。元売春婦たちは、政府の役人たちが彼女たちを「愛国者」と呼び、もっと稼ぐよう促したと証言した。
同時に、女性たちによれば、衛生当局は性病検査で陽性になった売春婦を摘発した。女性らの身を心配してではなく、アメリカ兵を守る為に。当時の新聞記事と国会の文書は売春婦たちを「慰安婦」と呼んでいた。裁判所は、金曜日、一部の女性は基地(村)に人身売買によって売られ来、他の者は生活の為に自ら売春を選んだようだと述べた。
この問題を調査した学者たちによると、韓国政府が北朝鮮から守ってくれる為に駐留していたアメリカ軍が出て行くことを恐れたのが、理由の一つだという。
この学者たちは、兵士たちの間に性病が広がるのを最小限に抑える為に、アメリカ軍が性売買を管理することに関わるようになったと言っている。ソウルのアメリカ軍司令部は、売春も人身売買も容赦しないし、支援もしないと言う。
韓国政府は基地村での関与を正式に認めたこともなければ、そこでの虐待について責任を取ったこともない。女性たちは何十年もの間沈黙を守った。アメリカとの同盟に有害とも見なせる問題について、1980年代の終わりまで韓国を支配した軍事政権が沈黙を強いたのも原因だ。
更に、韓国社会は特に外国の兵隊相手の売春婦に特別ネガティブな印象を持っている。韓国では売春は今も昔も一貫して違法だった。
しかしながら、2014年に120人以上の元売春婦が、拘禁と強制治療について賠償と政府による謝罪を求めて訴訟を起こした。金曜日に賠償を勝ち取ったのは原告のうち57人だけだった。なぜなら、他の者は不法に拘禁されたという証拠が十分でないと裁判所が述べたからだ。
慰安婦の弁護士であるキム・ジンは、金曜の評決は、基地村の女性が違法な治療を受けさせられた事が初めて公式に認められた点で画期的だったと述べた。しかし、キム氏は、女性たちは公式謝罪とより多くの賠償を求めて控訴すると述べた。政府が基地村を作り運用したことを認定する為にも。
「私たちはたった500万ウォンの為にこんな事をやっているんじゃない」女性たちが受け取る賠償金について、匿名希望の女性の一人が法廷の外で怒鳴った。「あの人たちは私たちに出来るだけドルを稼げと言った。今になって私たちに黙ってろと思ってる」
女性たちの弁護士、シン・ヨンスクは、裁判所が元売春婦たちについて「慰安婦」という言葉を使ったことを歓迎した。
何十年に渡って、韓国のアメリカ軍基地の周りにはバーや売春宿が立ち並んでいた。しかし、韓国政府が過去いかに深く基地村の性売買にかかわっていたか、殆どの韓国人は知らないと訴訟に加わった元売春婦たちは言う。
彼女たちによると、政府は彼女たちがより効率的に自分たちを売り込む為の基礎英語とエチケットの教室のスポンサーだっただけではなく、アメリカの憲兵隊と韓国の役人は性病を撒き散らしていると思われる女性を探して、定期的にクラブの手入れを行っていた。
警察は彼女たちを窓に鉄格子の入ったいわゆるモンキーハウスに拘禁したと、彼女たちは付け加えた。そこで女性たちは完治するまで強制的に治療を受けさせられたと言う。
「あの人たちは性病の治療をするだけで、病気で死にかけていても医者もよこさなかった」とパク氏は言う。「私たちの為に性病を治療したのではなく、アメリカ兵の為に治療していたのは明白だ」。
ニューヨーク・タイムズ 2017.1.20[原文]South Korea Illegally Held Prostitutes Who Catered to G.I.s Decades Ago, Court Says