「証拠を積み上げ確立した歴史」ねぇ・・
安倍首相が訪米する二日前の4月24日に朝日新聞が掲載した高橋哲哉東大院教授のインタビュー。
安倍首相が欧米から歴史修正主義者(リビジョニスト)と叩かれているのは、慰安婦問題の影響が大きい。高橋の言う、1990年代後半から被害者が声を上げたという下りも、慰安婦問題を指していると考えるのが自然だろう。そして、安倍首相の訪米を控えたタイミングでのこのインタビュー。曖昧にしているが、高橋は慰安婦問題で安倍首相が(国際社会から)歴史修正主義者とレッテル貼りされ叩かれるのは当然だと言っているのだろう。
歴史に限らず、学問は修正されて進歩するのが当たり前だと思うのだが、そこは「証拠を積み上げ確立してきた歴史を、根拠が薄弱なまま疑わしいと主張するから」ダメなのだとうそぶく。判断と認識を磨き続けよと首相にお説教までしている。
「証拠を積み上げ確立してきた歴史」とか「根拠が薄弱な主張」と言いつつ、その内容は具体的には語らない。確立した歴史とは何のことか?慰安婦が存在したこと?誰も否定してません、そんなこと。具体的に語らないのは、語った瞬間に誤魔化しが露呈するからである。
証拠重ねた歴史政治家は尊重を
文書資料や証言を中心に記述され、語られてきた歴史が、時の推移を経て見直されることは当然ある。歴史記述や歴史観の修正自体は、学問的にも正当なことだ。
しかし、現在の歴史修正主義が否定的に語られるのは、証拠を積み上げ確立してきた歴史を、根拠が薄弱なまま疑わしいと主張するからだ。論理的な飛躍を犯しながら、自分たちが否定したい事柄は「捏造だ」と言い、修正を図る。
日本は敗戦後、アメリカの庇護の下で経済成長にいそしみ、真に過去と向き合ってきたとは言いがたい。帝国主義時代の精神性やものの見方が清算されずに、残っているとも言える。その中で、1990年代後半から歴史を見直す動きが激しくなった。戦争の被害者自らが、日本による侵略と植民地支配の責任を問う声を上げると、それに反発する形で歴史修正主義的な言説が広かった。
だからこそ、政治家の歴史に対する姿勢が問われる。民主主義や平和を追求するなら、人々の権利を侵害した歴史を直視し批判的な認識を持つことが必要だ。政治家は歴史家による事実の探求の成果を尊重した上で、自己の判断と認識を磨き続けなければならない。
(聞き手・藤原慎一)
朝日新聞 2015.4.24 14面