2015/11/10

LA日系紙、慰安婦碑「頼むから止めてくれ(Stop.Please.)」


この記事は一月ほど前に教えてもらった。

太平洋戦争中に白眼視された経験から、日系人の中には戦前の日本に対して、一般のアメリカ人よりも時には強い敵意を抱く者もいるようである。日系紙、羅府新報の論調も、決して日本に甘くはなかったと思う。そんな空気が、変わって来たかもしれない。

この記事を書いたのは、ジョージ・トシオ・ジョンソン。日系人と思われるが、(現地化した)日系アメリカ人の特徴でもあるのだろうか、アジア、ことに日本に対する無知と無邪気なまでのアメリカ信仰が認められる。しかし、そんな彼であっても慰安婦モニュメントには不快感を隠せないらしく、「I can only say: Stop. Please(こう言う他ない。頼むから止めてくれ)」などと二度繰り返している。

※ この記事に対する感想は別のエントリーとした。

次のステージへ: 慰安婦問題と向かい合う
INTO THE NEXT STAGE: CONFRONTING THE COMFORT WOMEN ISSUE

感情的をかき立てる醜い問題ではある。・・・だが、議論の為にこう仮定しておこう。帝国時代の日本とその軍隊に投げかけられた、正式には「慰安婦」と呼ばれる人たちに関する申し立てや告発や非難がすべて事実だと

現在も生存する人々(と語り部となるにのに十分長生きした人々)や一部の歴史家らによって語り継がれた、アメリカが第二次大戦に参戦する以前から戦中にかけて日本軍が組織的に日本人も含め主に中国朝鮮系や日本軍が占領した様々なアジアの国々の女性たちと、数人のヨーロッパ人の女性を性奴隷制度の下にシステム的に入れた。日本兵の為の・・・えー肉体的な給付として。

今言ったように、これは醜い問題だ。

数万人か数十万人か、このような形で利用された女性の数の推定値は別れている。明確なパターンがある一方で、慰安婦に関する話の全てが同じというわけではない

一部の女性は騙されたり強制されて性奴隷制に送り込まれたかもしれない。一部の女性は親によって売春、あるいは性奴隷制に売られたのかもしれない。一部は最初から売春婦--当時日本では合法的だった職業--だったかもしれない。安定した給料を熱望して。しかし、議論の為に最悪の状況を仮定してみよう。--強制された性奴隷制度--が殆どの慰安婦の置かれた状況だったと

ここ数年、慰安婦問題は日韓関係日中関係の棘となっている。慰安婦サバイバー(生存者)達は、日本や日本以外でデモを繰り返してきた。そしてここアメリカでは、慰安婦を記念するモニュメントを設置しようという運動が起こっている。カリフォルニア州グレンデール、ニュージャージー、バージニア、そして先週はサンフランシスコでも。

最近の例では、サンフランシスコ市の11人のメンバーからなる市議会が、市が慰安婦の為の記念碑を建てるよう求める決議を満場一致で採択した。今のところ資金は確保されておらず、設置場所も決まっておらず、何の計画も承認されていないが、報道によれば、個人献金により14万ドルが集まっているという。

日本では、どの政府機関でも慰安婦問題は最優先事項ではないようだ。たぶん日本政府内の多く人間は、問題が自然消滅して行くことを願っているのだろう。何もしないでいる間に(あるいはゆっくりと対応することによって)、生存する慰安婦は必然的にいなくなる。

大韓民国と中華人民共和国の政府には、ある程度正当化されて数十年も前のこの出来事で日本を叩くことは、公共の安全、汚染された食料や空気、汚職その他といった国内問題に対する怒りと注意を逸らすのに便利な方法である。

一方で現代の日本は自分の犯罪に正面から向かい合って来なかったと責められてきた。・・・。直視しよう、犯罪はあったのだ。--ドイツが、特にホロコースト(の罪)に向き合ったように。日本の場合は、部分的には戦後のアメリカの占領期の都合だったかもしれない。

戦争犯罪の裁きが完了するや、より大きなより切迫した仕事は共産主義者を摘発し、爆撃によて屈服させられた日本を再び自立させ、国民を食べさせ、より良い平和的な社会を作れるようにさせることだった。慰安婦たちに対する正義の回復は、優先リストのずっと下だった

さて、ここからが、たぶん特に中国系やコリア系、そして一部の日系アメリカ人と揉めることになりそうな部分だ。彼らは私がこれから述べることを誤解するかもしれない。だから、これを読んでいる皆さんには、どうか感情でなく客観性でもって読んで欲しい。

奴隷制やアメリカ原住民に対する虐殺や大統領令9066号と異なり、これまで述べたことはアメリカで起こったことではない。アメリカ上での出来事ではないのである。日本によって慰安婦として利用されたアメリカ市民は知られていない。この国は、まったく関係ないのである。

従って、町、郡、州、あるいは連邦政府レベルだろうと、いかなる形でも形であっても、慰安婦の記念碑にアメリカの納税者はお金を出すべきではない。選挙されたわが国の地方自治体のスタッフが時間や費用、労力を費やすのは間違っている。ここはモニュメントがあるべき場所ではないし、その目的に相応しい場所でもない。

確かに、慰安婦問題については議論が必要だ。しかし、それは政府間や国際的にである。一部であろうと全額であろうと税金で慰安婦記念碑をアメリカの公園にというのは間違っている

アメリカでも他所でも、慰安婦問題を訴えて行こうと思っている運動家がいる。かと思うと、帝国日本は女性を性奴隷制に強制していないと言う者もいる。

もしかしたら、[この問題に]関心を持つ全てのグループは、日系アメリカ人の経験から学べるかもしれない。この国では一時期、ホットな問題があった。日系アメリカ人に対する補償問題だ。補償問題を、断固として否定する者も妄信者も含めてコミュニティの議論から国家的な問題に変えたのは、1980年代初期の「戦時における民間人の転住・抑留に関する委員会」(CWRIC)だった。

CWRICのヒアリングという土台が無ければ、1988年にロナルド・レーガン大統領によって署名され日系アメリカ人にいくばくかの正義を与えた市民の自由法も無かった。

中国、韓国と日本は、もしかしたらアメリカや国連も関与して、専門家や学者、歴史家や犠牲者で構成された公正で客観的に事実を探求する為のオフィシャルな調査委員会の為に集い結論を出すべきだ。言い換えれば、皆が理解出来るよう、まずは真相を掴むべきだということだ。

日本政府は自分の為にも参加すべきだ。もしも日本が嫌がっても、他の関係国は日本を置いておいてどのみち話を進めるべきだ。日本にインセンティブを与える為に、韓国は公式調査が完了次第、日本とドイツがその地位に相応しい国連の常任理事国のメンバー入りを全力で支持することを日本に提案するかもしれない。もしかしたら、アメリカからも同様の提案を引き出せるかもしれない。またアメリカは第二次大戦の末期にロシアがどさくさに紛れて手に入れたいわゆるサハリンの島々(北方領土)を返還するようロシアに圧力をかけることも提案するかもしれない

同時に、録画された宣誓証言、書き止められ数ヶ国語に翻訳された今も生存する犠牲者たちのそれは、彼女たちが生きている間に記録に残されねばならない。

日本に関しては、安倍首相在任中にあり得るとは私には思えないが、結論がどうあれ、国家レベルで関わらなければならない。日本の上に垂れ込めているこの問題と、他の数十年前の(戦時中の)問題を完全に一掃する為に。それは傷みを伴うが、日本の敵(エネミー)とフレネミーの手からこの武器を取り上げることになるのだ。

慰安婦問題の運動家はこんなやり方を考えてみてもいい。この問題をドラマチックな映画にすることだ。韓国も中国も進んだ映画産業を持っている。全ての慰安婦を代表する一人の慰安婦を主人公に、彼女の素顔が見え肉声が聞こえるような映画を作ることだ。人を感動させずにはおかない映画を作り、アカデミー賞を獲ることだ。そして、確実に日本で公開されるようにする。時には、理解させるにはまず(相手の)心を掴むことが必要だ。

それでも、この国で起こったわけでもない事を記念する為に、税金を使って公共の場で建てる為に記念碑を建てようと考えているこの国(アメリカ)の議員たちには、こう言う他ない。「止めてくれ、お願いだから