以下は、製作者による解説。
この動画は、二つのグループの人たちに無視される可能性をもった動画でもあります。
一つの集団は、当然のことながら、慰安婦問題に無関心なリベラル(左派)の人たちです。
彼らは、韓国や中国の主張に反論し、日本の立場を弁明しようとする試みに対して「ネトウヨ」のレッテルを貼り、すべて唾棄しようとします。
彼らにとっては、「強制された慰安婦もいた」という事実を率直に認めたこの動画ですら厭わしいことでしょう。
もう一つの集団は、これまで熱心に慰安婦問題の弁明にとりくんできた保守(右派)の人たちです。
「慰安婦神話の脱神話化」のアプローチは、右派の人々がこれまで採用してきた弁明の手法とは大きく異なっているからです。
従来右派の人たちが採用してきた弁明のアプローチは、以下のような点を主張するものでした。
・韓国人の元慰安婦たちは、日本を貶めている強欲な嘘つきである。
・「強制された」という主張は大方矛盾を含んでおり、すべて疑わしい。
・つまり、日本軍の慰安婦に強制された慰安婦など存在しない。
・慰安婦は、高給取りの売春婦であった。
・慰安婦は売春婦なので、性奴隷ではない。
「20万人の女性が日本軍に強制連行された」とする韓国の主張が事実ではなのは言うまでもないことですし、また、韓国人の元慰安婦たちの証言が矛盾を含んでおり、嘘を述べている人々がいるのも事実です。
しかし、韓国人の元慰安婦の証言の矛盾を取り上げて「嘘」として否定することによって、私たちはあたかも「日本軍の慰安婦に自分の意思に反して慰安婦となった女性など存在しない」という極端な主張を世界に対して掲げることになってしまいます。
そして、この主張は明らかに歴史的な事実とは異なります。
「強制連行」の被害者ではありませんが、「就職詐欺」や「年季奉公」によって、自分の意思に反して慰安婦となった女性は存在しました。
また、占領地では、さまざまな複雑な状況下で、小規模で散発的なものですが、兵士による違反事例が皆無であったわけではありません。
韓国の主張を否定するあまり、実際にあったことまで全否定してしまうことや、元慰安婦たちを「嘘つき」と侮蔑し、人権的配慮に欠いているように世界の人たちからは見られてしまう態度が、日本の反論の信憑性と説得力を失わせています。
また第三部で引用したアメリカのニュースをご覧いただければお分かりの通り、売春婦も含めて「性奴隷」と見なしているアメリカ人に対して、「慰安婦たちは、売春婦だから性奴隷ではない」という主張はまったく理解されません。
「慰安婦神話の脱神話化」が画期的なのは、「自分の意思に反して慰安婦になった女性も、自発的に志願した女性も両方存在した」という当たり前な事実から出発して公平に論を組み立てている点です。
また、韓国人の元慰安婦たちを「強欲や嘘つきばばあ」などとなじる代わりに、人身売買の被害者として、同情の対象として一旦取り込んだ上で、それを「てこの支点」にして、韓国の主張を完膚無きまでに打ち破っている点です。
WJF「慰安婦神話の脱神話化」について語りたいこと(3) 2015.5.8(一部)