2011/05/09

障害者の性



こういった話も、「戦場の性」の問題を考える参考になるだろう。

重度障害の男性手助け

重度の男性身体障害者の射精を介助するサービスが、全国に広がっている。県内でも、新潟市に本部を置く「NPOホワイトハンズ」が3年前から介助を始めた。利用者からは歓迎の声も上がるが、障害者の性に対する社会の理解は低く、専門家は支援の充実の必要性を指摘している。

ホワイトハンズは、2008年4月1日に新潟市で設立された。脳性まひや筋疾患などのため、自力で射精できない障害者が介助の対象。北海道や東京都、大阪府、福岡県など18都道府県でサービスを実施している。県内では現在、5人の利用者がいるという。

佐賀市内で一人暮らしの40代男性は3年前から介助サービスを利用している。脳性まひで生まれつき両手が不自由。サービスを利用する前は満足に射精行為ができず、気分がイライラすることが多かった。
男性は「障害者も普通の男と同じで性欲はある。男を磨いて彼女をつくる努力をすべきだとは思うが、難しい場合には介助サービスが必要だと思う」と語り、「社会はもう少し障害者の性について考えてもらいたい」と訴える。

鳥栖市内の女性(27)は、週刊誌の記事を見てホワイトハンズの活動を知り、スタッフになった。介護の仕事を続けながら、介助サービスを行っている。

女性によると、介助サービスはゴム手袋をはめる。コンドームを着用してもらい、射精を促す。射精後はタオルで利用者を拭き、サービスは終了となる。

介助中に利用者がスタッフの体に接触することは禁止で、性的な会話もしない決まりだ。「日常会話で雰囲気を和ませてから介助する。終了後に利用者のうれしそうな顔を見ると、必要なサービスと感じる」

「息子は夢精しているが、親としては風俗店に連れて行きにくい。何か手伝えないかと悩んでいる」
24日に福岡市の県NPO・ボランティアセンターで開かれたホワイトハンズの勉強会。全国から障害者の親らが参加し、訪問介護の女性が、性欲をため込む障害者の現状を訴えるなど、お互いの悩みを話し合った。

ホワイトハンズの利用料金は15分3500円、30分5500円で、1時間を超えると1万円以上かかる。オランダでは、介助サービス料金を全額負担する自治体もあるが、日本ではまだ支援が広がっていない。

大学でジェンダー(社会的・文化的性差)や性について学び、介護職の経験もあるホワイトハンズ代表の坂爪真吾さん(29)は、介助サービスを始めた経緯を「障害者の性の問題が置き去りにされている現状を何とかしたかった」と話す。

だが、介助サービスに抵抗感をあらわにする障害者の家族や入居施設は多い。

県西部にある重度障害者の入居施設の責任者は「排泄(はいせつ)の世話で手いっぱいで、性の問題まで手が回らない。施設としては性の介助を受け入れることは考えていない」と否定的だ。

県障害福祉課によると、県内で両手が不自由な18歳以上の障害者は約2千人いる。同課の担当者は「特に相談は寄せられていないが、要望があれば(県として)考えていく必要がある」と話している。

●性の問題 社会も支援

西九州大の滝口真教授(障害者福祉学)の話 食事や睡眠、排泄(はい・せつ)という人間の基本的な欲求のなかには、性欲も含まれる。障害者が性に関心を持たないと考えるのは短絡的で、射精出来ずに体の不調を訴える障害者の声もある。障害者の性の問題も社会は避けることなく、トータルヒューマンケアサービスの一環としての支援が必要ではないか。

朝日新聞 2011.5.2