慰安婦問題を韓国政府は外交問題化させるつもりはなかった。ところが、98年に日本政府から日韓漁業協定の破棄を通告されると、これに対する外交上の駆け引きとして慰安婦問題の蒸し返しが決定された、この時同時に始まったのが韓国政府による日本の国連常任理事国入り反対キャンペーンではないか、と辺真一は分析している。日本の良識派が言うように、日本側の妄言が問題を蒸し返したといったものではなく、もっと現実的な理由から慰安婦問題は蒸し返されたようだ。韓国側によって。
今流行りの人権問題という建前でのまぜっ返しも、とうの昔に韓国政府が試みていた。キム・デジュン大統領が慰安婦問題を人権問題と強調した事を利用して、「人権問題の次元から日本の責任と直接的な賠償を促」せるのではないかと、韓国政府は考えた。皮肉なことに、田原総一朗によれば当のキム・デジュンはこの問題を決着させた積りだったようなのだが・・・。
そういえば、今年こんなニュースもあった。昨年の日韓合意を踏まえてだろう、韓国大使館からアメリカの連邦議員たちに、慰安婦関連の動きを停止してくれるよう要請が行われた。梯子を外された族議員は、「これまで強調してきた普遍的人権の話はどうなるのか」と困惑を隠しきれなかった。
慰安婦問題は対日対抗措置の一つだった!?
(略)日本政府が1998年1月23日に日韓漁業協定の破棄を通告した際に韓国政府は報復措置として▲漁業自主規制協定の破棄▲日本政府が外国漁船の入漁を阻止している北方領土周辺での操業▲日本の水産資源保護に決定的な打撃を与える漁獲方法を取る構えをみせていた。実際に日本が日韓漁業協定の破棄を通告した翌日から操業自主規制区域であった北海道沖、襟裳岬沖で韓国漁船(8隻)の操業を許可していた。
また、外交的報復措置も検討され、韓国国会では日本の国連安保理事国加盟に反対し、従軍慰安婦問題の解決を国家として日本政府に要求することなどが議論されていた。
日本の国連安保理常任理事国への加盟問題について韓国政府はそれまでは沈黙を守っていた。また、従軍慰安婦問題については国家レベルでは補償を求めないとの立場を取っていた。しかし、日本政府が日韓漁業協定の破棄を通告するや日本の国連安保理事国加盟に反対の立場を明らかにするだけでなく、阻止運動を展開し、かつ慰安婦問題でも日本政府が法的に責任を負うべきとする政府見解の表明も検討していた。
当時から日本は慰安婦問題では1965年に締結された日韓条約により国家レベルでは解決しているとの立場を取っていたが、柳宗夏外相(当時)は破棄通告から3日後の1月26日、国会統一外務委員会で「1965年の韓日請求権締結協定当時は従軍慰安婦問題の不法性が論議されなかった」と述べ、「日本政府が今になって慰安婦問題で賠償責任がないと主張するのは道理に合わない」と日本政府を批判していた。
実際にこの年、韓国通商外交部は「金大中大統領が最近、日本人との会談で慰安婦問題は過去を清算する問題ではなく、人権問題であることを強調しているので、政府は人権問題の次元から日本の責任と直接的な賠償を促す方案を検討している」としてスイスのジュネーブで開かれた第54次国連人権委員会で従軍慰安婦に対する徹底した真相究明と被害者に対する日本政府の直接補償を促すよう動いていた。
当時、日韓漁業協定が破棄されれば、1,600隻の韓国の漁船が日本の排他的経済水域から締め出され、その損失額は3千億ウォン(約300億円)を超すとされていた。(以下略)
辺真一 YAHOO!ニュース(全文) 2016.6.30