2014/11/15

秦郁彦著「慰安婦と戦場の性」 内閣国際広報室による英訳中止のワケ


秦郁彦の『慰安婦と戦場の性』。日本政府によって英訳される計画があったが頓挫していたと著者が明かしている。原因は、内閣広報官から海外の読者を刺激しかねない部分をカットするよう要請されたからだということである。

正論であっても、歴史や文化的な背景を共有していない外国人には真意が伝わり難い、というのは分かる。この8月、過去の慰安婦記事を一部撤回した際、朝日新聞は秦教授の寄稿文を掲載し、同紙の英字版にも転載された。あれを読んだ時、英語読者に誤解されないだろうかという懸念は自分にもあった。しかし、広報官の言う「刺激する」するとは秦の著書のどの部分の事なのか?自分には見当がつかないし、逆に、カットすることで痛くも無い腹を探られるのではないかと危惧する。

秦は長谷川広報官を「この人なら漱石や鴎外の翻訳でも同じ注文をつけそうな見識の持ち主」と言っている。どうやら広報官個人の問題と秦は見ているようだが、「(安倍)首相の意向」というのも少し気になる。

 1年半ばかり前になるが、内閣国際広報室から拙著の『慰安婦と戦場の性』(新潮社、1999年刊)を英訳したいとの要望があり筆者も応諾し訳者も内定したところへ、新任の長谷川広報官から、首相の意向をちらつかせながら「刺激的」な部分を大幅に削除するよう要求された

この人なら漱石や鴎外の翻訳でも同じ注文をつけそうな見識の持ち主と推察されたので、私の方からご破算にしてもらった。臆病すぎる官僚的な対外広報なら、何もしないほうがまだましと言われないようにしたいものである。

産経(一部) 2014.11.13

14 件のコメント:

  1. 私もこの記事を読んで驚きました。
    秦氏が実名まで書いているのですから、これは真相を究明すべきではないでしょうか。
    氏もそれを望んでおられるはず。

    まずは「ちらつかされた首相の意向」とやらが本当に安部首相の意向なのかどうか。
    そこが知りたいです。

    もし本当なら、今まで自民党を支持してきましたが、次の解散総選挙では不支持に回ります。

    問題がクリアにならなかった場合も同様です。

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    1. 長谷川広報官が気を利かした積りで余計な事をしたのかもしれませんが、どうも引っかかりますね。

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  2. 山路 敬介2014年11月17日 1:38

    秦郁彦氏は英訳本を出すなら印税をすべて放棄する、とまで言って協力姿勢を示してたんですがねぇ。

    しかし政府肝入りでの出版計画とは具体的にどういう計画だったのか、理解しかねます。
    政府の介在をまったく伏せてでも、欧米で大々的に出版するくらいの芸当が出来ないと、やってみても実効性が薄いんじゃないでしょうか?
    >内閣広報官から海外の読者を刺激しかねない部分をカットするよう要請された

    というところから察すると、正面きって政府関与を打ち出すつもりだったんでしょうかね。
    であるからこそ、秦氏に日本政府の見解と相違する部分や、刺激する部分を修正、あるいは削る、という要望もするわけでしょうね。
    だとすると、非常にアホな戦略ですね。
    アメリカ人はそんな日本政府の広報みたいなもの、金出して読まないですよ。

    せめて、政府は金だけ出して内容はふれず、日本を代表する歴史家の著作物である、としておけばいいものを。
    欧米には金さえだせばいくらでもセンセーショナルに売り出してくれる出版社があるんだし、どうせ出版後は物議を醸すことになるだろうから、秦氏はそのくらい覚悟してますし、あの作品に自信をもってますよ。
    アイリスチャンの方法を見習ったらどうなんだ!と言いたくなります。

    通産省出身の長谷川栄一さんが考えそうな愚鈍な官僚案ですが、上役の世耕弘成もまったくセンスないですからね。
    彼は第一次安倍内閣の時も広報担当で失敗ばかりしていた前科がありますからね。
    しかし、本当に著作者の表現を制限させようとするなんて、本当に安倍さんがしようとしたのでしょうか。
    そうしたやり方は安倍さんらしくないし、かなり疑問ですね。

    ため息しか出ない話ですね。

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    1. 二通り可能性があると思います。とおるさんが指摘されているように、「娘を売る」といった、日本人にとっては問題なくとも欧米人の琴線に触れるような表現を嫌ったのか、それともアジア女性基金に対する批判の部分など日本政府にとって不都合な部分を嫌がったのか。

      >安倍さんらしくないし、かなり疑問ですね。

      この問題に限って言えば、安倍氏は言うべきこと(説明)を言わず、言うべきでないことを口走って状況を悪化させて来た、と私は思っています。総理は口出しせず、適任者に判断を委ねた方がいいと思うのですが、人選を誤りましたかね?

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    2. もう一つ。私はこんな中途半端なことはせず、政府が公式に調査して結果を公表した方がいいと思っています。国際社会がそれを信じようと信じまいと、日本政府としての公式見解を出すことに意味があると思います。安倍政権は、民間の研究に任せる方針だそうですが。

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  3. こんにちは。

    『慰安婦と戦場の性』の英訳版について、
    実は、正直なところ、私もあのままじゃあ、英訳しない方がいいと思っていた口です。

    というのは、当該書は、資料、情報が豊富で慰安婦問題を考えるなら必読書と言えますが、一方、文中には、「娘を売る」とか「売られた」とかの文言が随所にあり、さっと目を通した読み方だと、結論は、極論、「人身売買はあったが強制連行はなかった」「強制連行はなかったが人身売買はあった」との結論になりかねない印象があります。実際、秦氏の結論もそのような可能性も( 本書368頁「おそらく、第六章で紹介したビルマやフィリピンで米軍捕虜となった慰安婦たちのほぼ全員がそうだったように、大多数を占めるのは、前借金の名目で親に売られた娘だったかと思われるが、それを突きとめるのは至難だろう」 )。

    これは、出版当時、「従軍慰安婦」問題の論点が、少なくとも日本においては、「強制連行」の有無だけだったためか、当該書の基本的な姿勢は、極論、「強制連行」がなかったことが言えれば、あとは人身売買があろうが、詐欺行為があろうが無問題とのスタンスで編集されているような印象であり、当時としてはそれで良かったのかもしれませんが、現在においては、欧米諸国では性目的の人身売買を問題視し、なでしこアクションの外国人記者クラブでの外国人記者とのやりとりにみられるように詐欺行為を問題視してきているような状況においては、そのままの英訳出版では、海外での誤解を増幅しかねないようにも( それも、民間ならいざしらず、日本政府関係による出版となると )

    個人的には、英訳をするのであれば、補足文章を追加した上、「売る」とかの実態を解説したうえで、、、例えば、具体的には、軍慰安婦制度の実態としては、一部の悪質な業者がやりたいようにやっていた一般の公娼制度とは異なり、慰安婦は数年で前借金も完済でき、日常の待遇も一定保護され、人身売買と呼ばれるような制度ではなかった可能性。また、旧日本軍は、そうした悪質業者の行為について結果としては不十分だったかもしれないが必要な措置をとっていた可能性を解説した補足を追加したうえで、外国人に誤解を与えないような形にする必要があるのではないのかと、、、こうした補足解説のための証言その他は当該書の中に断片的にではありますけど書かれていることなので、そんな時間のかかる作業でもないようにも思えますし。

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    1. >英訳をするのであれば、補足文章を追加した上、「売る」とかの実態を解説したうえで

      そうなんです。私もカットではなく、必要なのは補足説明だと思っています。民放の番組で外国人タレント(?)が、「売られたという事は奴隷ってことじゃないですか!」と怒鳴ってましたが、日本人が「売る」というのは身売りのことで、当時の身売りは人身売買にならぬよう(グレーゾーンではありましたが)、ちゃんと規定があり、慰安婦もその規定に基づいた雇用契約を交わしていたわけですね(あくまで原則論として)。英訳するなら、誤解のないようその辺の説明を補う必要があるでしょう。

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  4. こんばんは。
    最初に発言した者です。

    なるほど、過激な表現とはそういうものも指しているのですね。
    私はてっきり、特定の国にとって不都合なことをストレートに言って摩擦が起きるのを避けたいという意味だと解釈していました。

    産経の記事はどうもそうは読み取れなかったもので。
    ますます真相が知りたくなってきました。

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    1. その点、真相を知りたいですね。秦氏がもう少し詳しく書いてくれるのを期待しています。

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  5. 匿名と呼ばれた男2014年12月7日 2:36

    秦の本?
    恥ずかしいからやめといた方がいい。
    ただの政治宣伝みたいな本だったし。
    ホンニンは「百科事典」なんて書いていたが、あんな資料さえずさんな百科事典があるわけないだろう。

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    1. そういえば、朝日新聞は検証チームの準メンバーとして秦氏を指名しましたね。「ご意見を伺いたい」そうで。

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    2. 匿名と呼ばれた男2014年12月8日 16:46

      朝日はアベの顔色をうかがいながら、検証チームメンバーを選んでいるからだ。
      秦はアベの「慰安婦」問題ブレーンの一人だからだ。

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  6. 私も慰安婦問題には関心があり憤りも感じてましたので秦氏の(慰安婦と戦場の性)を読みました。小説のように面白いことはありませんが膨大な資料を駆使した秀逸な史実書と思います。海外版は英訳は勿論仏訳、独訳、西班牙語訳、伊訳、露訳まで敢えて言うなら漢訳、韓国語訳までやればよいと思います。
    補足文章も必要と思います。そして世界中の国をこの論争に巻き込めばよいと思います。そして韓国の嘘が公にされる時が来ると思います。
    日本は堂々と世界に訴えかけなくてはいけない。長谷川栄一広報官は何を考えているのか、事なかれ主義では国も自身も埋没しますぞ。。

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    1. これだけ注目されるようになると、研究者も増えるでしょう。必然的に質も上がって来ます。そうなると、状況は変わってくるものと思われます。

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