2010/12/19

嫁に売られた赤ん坊 (現代の中国)




満州からの引き揚げ者によると、敗戦の混乱で子どもを売る日本人、あるいは中国人から子供を売らないかと持ちかけられた日本人が少なくなかったらしい。その時は女の子の方が高く売れたということだが・・・。

生まれたばかりの女の子を、息子の嫁にするためになけなしの財産をはたいて買う農夫。先進国や現代の価値観では計れない世界がある(あった)のだということを忘れないようにしたい。

人身売買を目的にした誘拐事件も後を絶たない。写真はドキュメンタリー「中国の盗まれた子供たち China's Stolen Children」より。


「そのとき両親はきっと貧しくて私を捨てるしか生きる道がなかったの。私も貧乏に育ったからそれが分かる。もし会えたら両親を恨んだりしない。許します」

中国のインターネットで、不特定多数の参加者が画面上でチャット(おしゃべり)する「QQ」と呼ばれるサービスに、生みの親を探す女性たちが集まるコーナーがある。QQ名を「天上人間」と名乗った福建省の27歳の女性に、チャットを通じて聞いた話だ。

養父母は生まれたばかりの彼女を1983年に仲介業者から200元で買って育てたという。公務員の月給が約50元だった時代。農業を細々と営んでいた養父母は1人息子の将来の嫁にと、なけなしの現金を用意した。だが息子は子供のころ病死。結局、養女になった彼女は今、年老いた養父母の生活のために必死に働く毎日だ。

福建省の北部で、80年代から90年代にかけて1万人以上の乳幼児が仲介業者に売られたとされ、彼女はQQのコーナーで同じ境遇の女性らと情報交換して肉親捜しを続けているが、まだ有力な手がかりはなにも得られていない。

中国では農村などで今も「跡継ぎになる男の子は大事だが、女の子なら食い扶持がかかる」との考え方をもつ親が後を絶たない。

この悪癖に、人口増加抑制のため79年12月に義務化された「一人っ子政策」が拍車をかけた。

・・・地域によって必ずしも厳格には適用されなかったというが、それでも男の子がほしい親は仲介業者に女の子を売ったり、女の子に現金を積んで男の子と交換したりすることに、ますます罪悪感を感じなくなった。「上有政策、下有対策(お上に政策あれば、下々には対策がある)」というお国柄。一人っ子政策がこの国に生を受けた女の子の運命を過酷にした。・・・

産経新聞2010.12.19