このエピソードを読んだ時、アメリカで日本の(教科書から消された)歴史問題をテーマにしたドキュメンタリーを撮った泉谷明子の事を思い出した。韓国メディアに、(私たち)日本人が歴史を正しく習う時までもう少し待って下さいと懇願した彼女は、道上の話に出てくるナイーブな女子留学生に似ている。彼女に対し「反日」「在日」といったレッテルを貼ろうとした人もいたが、彼女も単に純真だったに過ぎない。
泉谷明子も、日本が「何をし、何をしなかった」のかを学校で学ぶ機会がなかった。だから自分のドキュメンタリーに「沈黙の恥(Silent Shame)」というタイトルをつけたのだろう。彼女は、日本が何をしたかについて教わって来なかったことにショックを受けたが、実は日本が何をしなかったかについても教育されていなかった。でなければ、トロントアルファのような団体に利用されるようなことはなかったろう。
こういうわけだから、自分は慰安婦を子供に教えることには賛成である。その時は、道上の言うように「何をし、何をしなかったのか」を洗いざらい教えるべきだ。もっと言えば、慰安婦だけでなく慰安婦騒動についても教えるべきだ。これからアジアとの交流は前にも増して盛んになる。子供たちが、隣国の人々と交わる機会も多くなる。その時にこういったナイーブな子供を作らぬように、子供に抗体を作ってやる必要がある。
泉谷明子も、日本が「何をし、
何をしなかったか」学ばず海外に出た
何をしなかったか」学ばず海外に出た
道上尚史はソウル駐在も経験した元外交官。韓国では現地の人々と議論し、一時嫌韓になりかけながらも、著名人と意見を交換したり新聞に自分の意見を投書した人。頑なな日本の保守派も批判しているが、日本の「良心派」にも苦言を呈している。
以下は、道上と保守派の論客との対話からの抜粋。強調は、いつものように引用者。
自国の歴史に「臭いものにふた」をしてはいけない。それは誤ったやり方だ。
アメリカでのことだが、韓国の留学生が日本の植民地支配、非人道的行為を口を極めて告発したら、日本の女子学生は「全然知らなかった、ごめんなさい」と泣いてあやまり、アメリカ人から見て異様だったという。先生はこれでよいと思われるか。自国の歴史の誇らしい面、否定的な面の双方をしっかり教え、きちんと説明できる青年を育てる必要がある。
[...]A先生との対話で、泣くばかりだった留学生の例をあげた。この女性は、日本がどれだけ悪いことをしたのかしなかったのか、何も教わっていなかった。歴史認識などという大層なものでなく、常識的な基礎知識があれば、泣くのでも怒るのでもなく、きちんと落ち着いて説明できるはずだ。「ナチスよりもひどい、世界史上最悪の残虐な日本は、今も韓国侵略を狙い軍国化を進めている」云々の、よくある乱暴な決めつけには、さすがに一言述べるべきでもあろう。
道上尚史 日本外交官韓国奮闘記
おまけ: 良心派に対する批判だけを紹介するのはフェアではないかもしれないが(道上は、良心派を全否定しているわけではない)・・・。
著作でもシンポジウムでも、韓国人の、誤解や無知に基づく日本批判、自国の事情に無反省で相手のみを批判する姿勢に対し、日本の「進歩的な良心派」は説明をせず、反問や批判をしなかった。[...]韓国の日本への大変な誤解、無知を修正するどころか、定着拡大させた。[...]ひどい場合は、自己を邪悪な古い日本と戦う正義とみなし、自分も日本の一部であることを忘れ[...]近年の「嫌韓論」は、かかる不幸な背景のなかで生まれた(もちろん、良心派が唯一の理由ではないが)。
慰安婦「伝説」について反論することは未来指向の日韓関係の為にも大切である。何をし、何をしなかったか。そのどちらか一方だけ教えてもバランスの取れた人間にはならないし、そういう人間に日韓関係を委ねるわけにはいかない。