2014/06/24

[資料] 河野談話検証 全国紙の社説


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毎日新聞

社説:河野談話の検証 これで論争に終止符を

政府は、慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた1993年の河野洋平官房長官談話について、作成過程を検証した報告書を公表した。談話の焦点である「強制性」の認識を巡って、日韓両政府が緊密な文言調整をしていたことが明らかになった。

談話の正当性を巡る論争は一区切りにして、歴史家や研究者に任せよう。政治は慰安婦問題の解決に真正面から取り組まなければならない。

検証は、2月に国会で元慰安婦への政府の聞き取り調査の信ぴょう性に疑義が示されたのを契機に始まった。安倍晋三首相はもともと談話に批判的だ。当初は、談話見直しにつなげる意図があったのではないか。

だが日韓関係改善を迫る米国の意向もあり、首相は3月に談話継承を表明せざるを得なかった。その結果、談話は継承するが検証もするという、わかりにくい対応になった。

検証結果からは、日本が「強制連行は確認できない」という立場を維持したまま、韓国の意見を踏まえて強制性の表現を工夫する様子が伝わってくる。朝鮮半島での慰安婦募集の際の強制性については「甘言、強圧等、総じて本人たちの意思に反して行われた」との表現で決着した。

また、日本が民間の寄付金をもとに補償した「アジア女性基金」の経緯も検証し、韓国政府が一時は基金を評価したことを明らかにした。

韓国政府は「談話の信頼性を毀損(きそん)する」と反発し、日本国内の一部保守派からは「談話の信頼性は崩れた」と見直しを求める声が出ている。

談話が問題解決を目指した政治的文書の性格を帯びていたのは確かだ。事前調整があったのは、韓国が受け入れ可能な内容でなければ意味がないと日本も考えたからだろう。そのことで談話の信頼性や正当性が損なわれたと考えるのは誤りだ。

検証チーム座長の但木敬一元検事総長は「日本は絶対に認められない事実は認めていない。韓国も立場は譲っていない」と語っている。むしろ当時の日韓の担当者が、慰安婦問題の解決に向けぎりぎり譲れる範囲で歩み寄った姿勢を評価したい。過去をこれ以上、掘り返しても互いの信頼が損なわれるだけだ。

菅義偉官房長官が談話継承を改めて強調したのは当然だ。米国務省のサキ報道官は「米国は河野談話を見直さないとした菅長官の声明に留意している」とその姿勢を支持した。

韓国側にも配慮を求めたい。過剰な表現で一方的な批判をするのは控えてほしい。こうした言動への日本国民の不快感が、談話見直しへの一定の支持につながっているからだ。

過去を冷静に見つめ、未来に生かす発想を互いに今一度思い起こそう。検証をその契機にしたい。

毎日 2014.6.22

読売新聞

河野談話検証 外交的配慮が事実に優先した


いわゆる従軍慰安婦に関する河野官房長官談話の綻びが、改めて浮き彫りになった。

有識者による政府の検討会が、元慰安婦への「おわびと反省」を表明した1993年8月の河野談話の作成過程を検証した報告書をまとめた。

韓国側が「韓国国民から評価を受け得るものでなければならない」と談話の修正を求めるなど、日韓両政府が緊密に表現を調整した実態が明らかになった。

焦点の慰安婦募集の強制性について、談話は「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」としている。

こうした表現になった経緯に関し、報告書は「どのような表現・文言で織り込むかが韓国側とのやりとりの核心」で、「最後まで調整が実施された」と明記した。

慰安所の設置に関する日本軍の関与については、日本軍の「指示」との表現を盛り込むよう韓国側が求めたが、日本側は拒否し、「要請」との表現に落ち着いた。

韓国側の求めで、日本政府は元慰安婦16人の聞き取り調査を行ったが、調査終了前に政府内で原案が作成されていたという。

事実関係よりも政治的妥協と外交的配慮を優先したのは明らかだ。極めて問題の多い“日韓合作”の談話と言えよう。

日本政府は従来、慰安婦問題や河野談話の事実関係について、突っ込んだ議論を避けてきた。

今回、談話の作成過程を詳しく検証し、公表したことは、慰安婦問題をめぐる国際社会の誤解を解くうえで一定の意味がある。

日本側は、調査では官憲による強制連行は確認できなかったとして、談話には「強制連行」という言葉は使わなかった。

だが、河野氏は談話発表時の記者会見で、強制連行の有無についての質問に、「そういう事実があった」と答えた。誤った認識をさらに広げた河野氏の罪は重い。

安倍首相は、河野談話を見直さない方針を明言している。日韓関係の改善を模索するための大局的な政治判断だろう。だが、韓国政府は、検証について「談話の信頼性を損ねる」と反発している。

河野談話が起点となり、日本が慰安婦を強制連行したかのような誤解が世界中に広がっている。米国では昨年、グレンデール市に慰安婦像が設置され、韓国系米国人による反日運動が展開された。

河野談話があるために、政府は有効な反論を行えずにいる。

談話の見直しは、いずれ避けられないのではないか。

読売 2014.6.22

朝日新聞

(社説)慰安婦検証 問題解決の原点に返れ

慰安婦問題をめぐる93年の河野洋平官房長官談話について、政府はきのう、作成過程などの検証結果を国会に示した。

談話の文言をめぐって日韓両政府間でかなり細かなやりとりがあり、一部は韓国側の意向を受け入れたが、日本政府の独自の調査に基づいてつくった。最終的には韓国側と意見が一致した――。そんな概要である。

両政府のやりとりからは、双方とも難しい立場を抱えながら問題を解決しようという強い意志が感じられる。検証チームの但木敬一座長も「談話を出すことで未来志向型の日韓関係をつくろうとした」と語った。

この検証が行われたのは、日本政府が行った元慰安婦の聞き取り調査の信頼性を問題視する声が上がったからだ。談話の作成過程を明らかにすることで韓国を牽制(けんせい)する狙いもあったのだろう。

しかし、報告書は次のように指摘している。資料収集や別の関係者への調査によって談話原案は固まった。その時点で元慰安婦からの聞き取りはまだ終わっておらず、彼女たちの証言を基に「強制性」を認めたわけではない。

安倍首相はかつて、慰安婦への謝罪と反省を表明した河野談話の見直しを主張していた。

だが、国際社会からの強い反発もあって、河野談話を見直さないとの方針に転じた。

もう談話に疑義をはさむのはやめるべきだ。

報告書は、河野談話やその後の「アジア女性基金」について、韓国政府が一定の評価をしていたことも明らかにした。

韓国にすれば、日本側から秘密にしようと持ちかけられていたことである。それなのに了承もなく、一方的に公表されるのは信義に反することになる。

報告書に韓国政府は猛反発し、せっかく始まった日韓の外務省局長級協議も中断する可能性が出てきた。

また、韓国政府は「国際社会とともに対抗措置をとる」とも表明した。

慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がたとうとしている。

この間、両政府関係者やNGOなど多くの人々が関わってきた。だが、もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済であることは論をまたない。

韓国政府に登録した元慰安婦の生存者は54人になった。

日韓両政府に、互いをなじり合う余裕はない。河野談話をめぐって「負の連鎖」を繰り返すことなく、今度こそ問題解決の原点に返るべきだ。

朝日 2014.6.22

産経新聞

「河野談話」検証 やはり見直しが必要だ 国会への招致で核心ただせ

信憑(しんぴょう)性のない作文をまだ継承しようというのか。

慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の「河野洋平官房長官談話」について、政府の有識者による検証結果が公表された。強制性を裏付ける証拠のないまま、韓国の修正要求を入れ作成された過程が政府の公式の検証で明らかにされた意味は重い。

検証では、唯一の根拠とされた元慰安婦16人の聞き取り調査がまとまる前にほぼ談話がつくられ、聞き取りは事実の究明より「儀式」として行われたことが明らかにされた。事実に目をつぶり、政治決着を急いだ談話の虚構性が一層明確になり、その信頼性が、根本から崩れた。

≪日韓の合作を「隠蔽」も≫

根拠のない談話により、日本の名誉は著しく傷つけられている。やはり談話は、破棄、撤回を含め見直さなければならない。

河野談話は、業者による募集が慰安婦の意思に反して行われた事例があり、「官憲等が直接これに加担したこともあった」などと記述している。ありもしない日本の軍や警察による「強制連行」の論拠として利用されてきた。

しかし、政府が集めた公式資料に、強制連行を裏付ける証拠はなかった。談話作成の事務方トップだった当時の官房副長官、石原信雄氏も今年2月の衆院予算委の証言で認めている。



検証報告書には、日本政府は一連の調査で「いわゆる『強制連行』は確認できない」との認識だったことが明記された。

また談話が原案段階から韓国側に提示され、韓国側からの修正要求で、慰安婦の募集にあたった業者について「軍の意向を受けた」を「軍の要請を受けた」に書き換えるなどした交渉経緯が詳述された。こうしたすりあわせによる日韓合作の作文であることは産経新聞の取材でも判明していた。

事実認定に関わる部分まで韓国側の意向をうかがっていたのに、日本政府が「主体的」に談話を作成し、談話に正当性があるなどという強弁は通らない。

検証では、談話の文言をすりあわせた経緯について日本側から「マスコミに一切出さないようにすべきであろう」と韓国側に求めるなど隠蔽(いんぺい)工作が行われていたことも明らかにされた。国民への背信行為である。

当初から政府は、安倍晋三首相の国会答弁で、検証は進めるが、談話は「見直さない」ことを明言していた。菅義偉官房長官は20日の記者会見で「談話を見直さないという日本政府の立場に何ら変わりはない」と重ねて表明した。

安倍政権は河野談話の見直しに意欲を示していたのではないのか。談話を見直さず継承するという結論ありきで、一体この検証も何のために行ったのか、国民は理解できない。

元慰安婦の聞き取り調査資料を国民に早急に公開し、事実の核心の再調査が欠かせない。

≪謝罪外交やめ事実発信を≫

偽りの談話の作成過程は政府内で引き継ぎがなかったことも分かっている。河野氏は談話発表の際の記者会見で強制連行の事実があったか認識を問われ、「そういう事実があった」と述べている。河野氏や韓国との折衝経緯を知る当時の内閣外政審議室長の谷野作太郎氏らを早急に国会招致し、説明責任を果たしてもらいたい。

韓国では、検証結果公表前から激しい反発があった。発表と合わせるように、島根県の竹島沖の日本の領海を含む海域で射撃訓練を強行する暴挙にも出た。都合が悪いことに対し、力による挑発をしても日韓関係の改善や問題解決にはならない。

河野談話は、歴史教科書など教育にも影を落としている。談話にも使われた戦後の造語である「従軍慰安婦」の記述は、一時中学教科書に一斉に登場した。その後、実証的研究をもとに「従軍」が削除され是正されてはきたが、高校教科書を中心に河野談話に基づく記述が依然ある。

海外でも、韓国だけでなく米国など国際社会に「日本軍の性奴隷」といった誤解と曲解が広がっている。

相手の意向を踏まえ、謝罪を重ねる外交姿勢は国益を害し、国際的にも信用されない。根拠が崩れた河野談話という負の遺産をなくし、事実を発信していかねば、過去の問題が蒸し返され、新たな謝罪要求を生むばかりだ。

産経   2014.6.22

日経新聞

河野談話の論議打ち止めに

安倍政権が従軍慰安婦問題に関する「河野談話」の作成過程を検証した報告書をまとめた。談話の書きぶりを巡り、日韓両政府が事前に非公式なやりとりをしていたことを明らかにした。新たな論争を生みそうだが、あえて提言したい。もう打ち止めにしよう、と。

談話は1993年に当時の河野洋平官房長官が発表した。日本軍が慰安所の設置・管理に「直接あるいは間接に関与した」と断じ、「おわびと反省」を表明した。

自民党の保守派などは「軍の関与や強制連行を示す証拠はない」と談話を批判してきた。安倍晋三首相は2年前の自民党総裁選出馬時に「子孫の代に不名誉を背負わせるわけにはいかない」と談話の見直しに意欲をみせた。

検証すると決めた時点では、談話の信ぴょう性を弱め、見直しにつなげる思惑があったようだ。

そのわりに検証作業は元慰安婦16人からの聞き取り録など既存の文書を読み直すにとどまり、その証言が真実かどうかの裏付け調査には踏み込まなかった。

談話の否定は日韓関係を一段と冷却化させかねず、首相の靖国神社参拝などと相まって欧米からも「歴史を書き換えようとしている」と懸念する声が出たためだ。

首相は3月に国会で「河野談話を継承する」と明言した。結果として報告書は談話を堅持させたい側にも、破棄させたい側にも不満足なものとなった。政権運営として得策だったとは思えない。

昔のできごとにはいくら調べてもはっきりしないことが少なくない。元慰安婦の証言の食い違いなどを指摘しても水掛け論になるばかりで、得るものは少ない。

いま政府が取り組むべきは、長期的な日本の国益を見据えて外交政策を進めることだ。東アジアの不安定な安全保障環境を考えれば、民主主義・市場経済の価値観を共有する日韓が角を突き合わせてよいことはない。

河野談話の蒸し返しはもうやめて、未来につながる日韓連携を考えるときだ。

日経 2014.6.21

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