1993年に河野談話と慰安婦に関する調査報告を発表するにあたって内閣外政審議室がまとめた想定問答集というものがあったらしい。
慰安婦の強制連行(徴用)は本当に行われたのか?という疑問に、「総合的に判断した結果、甘言、強圧によるなど本人の意思に反して集められた事例が数多く存在した」という人を煙に巻くような役人文章。日本国民をコケにしたのは、韓国政府でも韓国の反日団体でもなく日本政府であったという救いのない話。
【阿比留瑠比の極言御免】
答えになっていない慰安婦「想定問答」
当時のメディアも国民も随分甘くみられていたものだ-。平成5年8月、政府が慰安婦募集の強制性を認めた河野談話と慰安婦に関する調査結果報告を発表するに際し、内閣外政審議室がまとめた「想定問答」を情報公開請求で入手し、一読しての感想である。
A4版22枚、計36問にのぼる想定問答は、記者会見で出るであろう質問を予想し、それへの模範解答を記している。当時の河野洋平官房長官への事務方からの説明にも使用された。
ところが、内容はというと事実認定の部分は非常に曖昧で、明らかな嘘まで混じっていたのである。
例えば「韓国に対しては、発表案文について事前に協議しなかったのか」という問いには、こんな模範解答が示されている。
「事前協議は行っておらず、今回の調査結果はその直前に伝達した」
だが実際は、河野談話も調査結果報告も原案段階から韓国側に示し、その修正要求を大幅に受け入れたのみならず、韓国側が提示した文節そのものを採用した部分もあることが、産経新聞の取材で判明している。(今年元日付と1月8日付朝刊紙面で既報)
これでは河野談話は、初めから国民の目を欺いて成り立ち、発表されたというほかないだろう。
また、肝心要の「強制連行の事実を認めたのか。認めたとすれば何が根拠か」という問いへの模範解答も次のように噴飯ものだ。
「総合的に判断した結果、甘言、強圧によるなど本人の意思に反して集められた事例が数多く存在したようだとの心証を持った次第である」
慰安婦を強制連行した資料は一切出てこなかったのだから当然だが、全然答えになっていない。「心証」とは一般に「心に受ける印象」のことであり、結局は「そんな気がする」と言っているにすぎないが、想定問答ではこの言葉が繰り返し出てくるのである。
そして、強制性の有無について重ねて追及された場合の模範解答はこうだ。
「本人の意思に反して集められたことを『強制性』と定義づけるのであれば、いわゆる従軍慰安婦の募集にあたり『強制性』が存在したケースも数多くあったことを政府として認めたと理解していただいてよい」
強制性の定義・範囲を無理やり広げることで強制性は認めているが、強制連行の認定やその根拠に関しては言葉を濁したままだ。こんな曖昧な表現で真意が伝わるはずもなく、河野談話発表の翌日の新聞は「強制連行認める」(産経、毎日など)と報じ、それが既成事実化されていった。
さらに、河野談話の最大の根拠となった韓国での元慰安婦16人の聞き取り調査について想定問答が「網羅的ではないにしても代表例としては十分なものであった」と評価している点も、国民をたばかるものだ。
この聞き取り調査の内容を政府は非開示として国民の目から隠しているが、これも産経新聞が入手した調査報告書で氏名や生年月日の記載すら不十分で、慰安所がない地域で働いたとの証言もあるなど極めてずさんな調査だったことが白日の下にさらされた。
もはや河野談話は完全に破綻している。日本維新の会がこれから展開するという、河野氏の証人喚問を求める国民運動に期待したい。(政治部編集委員)