2012/11/07

気持ちは理解できるが・・・米紙に再び反論広告


この広告については内容を精査してみないと論評出来ないが(画像を送って下さったSさんに御礼申し上げます。残念ながら字が小さすぎて読むことが出来ませんでした)、すぎやまこういちが、前回(2007年)の意見広告(THE FACTS)を自画自賛しているようでは・・・いい予感はしない。

今回の広告については評価を留保するにしても、前回の意見広告は完全に失敗だったというのが定説だと思っていた。東郷和彦が言うように、あれがアメリカ下院の慰安婦決議採択の引き金を引いたというのが真相だろう(安倍首相の失言も原因)。最近の東郷の主張には賛同出来ないが、2007年の彼の回想は傾聴に値すると思う。

あの頃、決議案の行方を探っていた産経新聞の古森義久記者に彼のブログで質問したところ、(広告が無かったとしも)遅かれ早かれ決議案は採択されたと思うという返事だった。ハッキリは言わなかったが、現地で取材していた彼も逆効果だったと見ていたのではないか。

慰安婦問題で米紙に意見広告 強制連行裏付ける資料なし

作曲家のすぎやまこういち氏やジャーナリストの櫻井よしこ氏ら有識者でつくる「歴史事実委員会」は6日、米ニュージャージー州の地元紙「スターレッジャー」(約37万部)に4日付で慰安婦問題に関する意見広告を掲載したと発表した。日本軍による強制連行を裏付ける資料はなく、発見された公文書によれば強制募集や誘拐を禁じていたと訴えている。

民主党の松原仁前拉致問題担当相や自民党の安倍晋三総裁ら国会議員38人も賛同者として名を連ねた。

ニュージャージー州パリセイズパーク市では2010年10月、公立図書館に「日本帝国政府の軍によって拉致された20万人以上の女性と少女」などと記載された記念碑が建立された。広告は「事実でないことを認めてしまえば、社会全体の判断を狂わせ、日米2国間に悪い影響を与えます」と呼びかけている。

すぎやま氏らは07年に米下院が慰安婦問題に関する対日非難決議を採択した際、米紙に反論広告を掲載したグループの中心メンバー。すぎやま氏は6日の記者会見で「広告掲載を受けて当時の下院採決には十数人しか出席しなかった。広告には効果があった」と強調した

産経 2012.11.7



欧米人にとって被害者(?)が売春婦呼ばわりされる事が火病スイッチなのに、日本の愛国者たちは慰安婦が高給取りであった事を一番訴えたい。それが性奴隷説の否定になると信じているから・・。このギャップが話を拗れさせているのだろう。

東郷和彦の「歴史と外交」からもう一度引用しておく。自分はこの時の東郷の説得工作は十分でなかったと思う。努力が足りなかったというわけではなく、慰安婦のお得意様であったアメリカに日本を非難する資格があるのかと(やんわり)問うてみれば良かったのである。しかし、あの広告がアメリカのみならず、その後の各国の対日非難決議へとドミノ倒しのように誘爆を引き起こしたのは事実だろう。

追記: 広告には前回の反省を踏まえてか、女性に対する同情も表明されていたようである。ただし、これは慰安婦に対する同情にはなっていない。その為か、後に韓国人に対する中傷広告として逆利用された(2013.3)。

パリセイズパーク市の記者会見(2013.3)

6月15日、東海岸の友人から連絡があり、14日の『ワシントン・ポスト』紙に日本の政治家とオピニオン・リーダーの、慰安婦問題に関して『強制連行はなかった』とする意見広告が掲載されたという。・・・下院外交委員会の決議案がまた急浮上するだろうと深刻な声で告げた。

私にできることはといえば、日本の三つの立場を可能なかぎり、アメリカ国内で訴えることだった。

・・・「議員の多くは、自分の選挙区のアジア(韓国・中国)系の票を得るために、決議案に賛成する機会をうかがっているのだよ。総理の対応がその後抑制的になっていたので、せっかく沈静化してきていたのに、これでまた、決議案支持派は息を吹き返すね」

・・・「広告のなかには、正しいことも書いてある。しかし、いちばん大事な『日本は反省している』ということがほとんど書かれていない。この広告を見て、自分は意見を変えた。やはり、決議案は成立させたほうがよいと思う」

6月26日、下院外交委員会は・・・決議案を可決。・・・ほとんどが原案どおりの案文だった。・・・この動きは、オランダ、カナダ、EUの各議会における決議案採択へと発展した。

慰安婦に関する対日批判は、これからも、続くであろう。「過去を反省しない国」「女性の尊厳を踏みにじる日本」というイメージは、そのたびに少しずつ強まるであろう。6月14日の広告のなかで述べられていた”事実”については・・・個別に正しいものがあっても、広告の主目的が、慰安婦制度自体の正当性を訴えようとしていると受けとめられるなら、世界がこれを受け容れることは、まず予見されない。


敵に塩を送ってしまった反論広告THE FACTS(2007年)


鎌倉武士たちは一度の失敗で蒙古に対する戦い方を学んだ。現代の日本人は、怒りのあまり馬防柵に突撃を繰り返すばかりである。