[参考] 「養子輸出国・韓国」の汚名
【コラム】「養子輸出国・韓国」の汚名をそそぐには
1966年、米国人のポルシェイ夫妻は、支援していたチャ・ジョンヒという少女を養子に迎えるため、全羅北道全州市の孤児院を訪れた。ところが、この少女はすでに実の父親に引き取られていた。そこで孤児院は、別の少女を「チャ・ジョンヒ」として養子縁組させた。8歳の少女カン・オクチンさんはこうして米国に渡った。養子縁組の際に作成した書類にはカンさんの写真が貼ってあったが、名前や生年月日、家族関係は全て書き換えられていた。カンさんは、自分がなぜ外国人の養子にならなければいけないのか、なぜ名前が変わったのかも知らないまま、別人の名前で過ごすことになり、アイデンティティーをめぐって混乱に陥ったという。今年54歳のカンさんは映画監督になり、最近、ソウル・大学路で行われた「海外養子映画芸術祭」の開幕に当たって、自身のエピソードを盛り込んだドキュメンタリー『チャ・ジョンヒについて』を出展した。
韓国人養子「チャ・ジョンヒ」は、映画の中だけの話ではない。米国務省は最近、昨年10月から今年9月までに米国人の養子となった韓国人の子どもが734人に達し、韓国は米国に対する世界第4の養子輸出国だ、と発表した。現在も1日に2人の割合で、韓国人の子どもが養子として米国に渡っている。世界15位の経済大国で、経済協力開発機構(OECD)に加盟し、主要20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国も務めた国として、あまりにも恥ずかしい記録だ。
韓国政府はすでに数回にわたり「海外養子20万人」という汚名をそそごうと誓った。1998年、金大中(キム・デジュン)大統領(当時)は、養子として海外に渡った人たちを招いた席で正式に謝罪した。また、2005年にも金槿泰(キム・グンテ)保健福祉部(省に相当)長官が「あと4-5年で海外養子を根絶する」と宣言した。
ところが、その後も状況は変わっていない。韓国社会は海外養子を抑制するのではなく、むしろ奨励した。「われわれが育てる自信がない子どもたちは、より良い条件の下で育てるのが理想だ。それが気に食わないのなら、あなたがまず養子を迎えるべきだ」。このような声に、多くの人々は沈黙した。
養子として海外に渡る子どものうち、最も多いのはシングルマザー(未婚の母)の子どもで、87%を占める。残る13%は親の離婚などで養育が困難になった子どもたちだ。また、障害のある子どもが全体の20%を占めている。韓国は果たして、こうした子どもたちを育てられないほど貧しい国なのか。政府は現在、24歳以下のシングルマザーに対し、養育費として月に15万ウォン(約1万円)を最長5年間支援している。また、25歳以上のシングルマザーに対しては、子どもが12歳になるまで月に5万ウォン(約3400円)ずつ支援している。だが、この程度の支援で、果たしてシングルマザーが子どもを育てていけるのだろうか。
こうした待遇には、韓国社会の偏見が見え隠れする。シングルマザーを認めれば、家庭の枠組みが壊れるという論理だ。シングルマザーがどれだけいるのか、統計を取ってもいない。そのため、十分な政策を講じることができないのだ。以前は分別のない男女交際がシングルマザーを生んだ。だが最近は、結婚年齢が遅くなり、結婚に対する意識も変わって、別の要因でシングルマザーが増えている。
政府はこれ以上、シングルマザーの問題を海外養子によって解決してはいけない。欧州諸国ではシングルマザーを認め、積極的に支援を行っている。韓国も特別法を制定してでも、シングルマザーに対し十分な生計費や教育費を支援すべきだ。与野党は票につながる無償給食や無償教育に熱心に取り組む前に、シングルマザーに関心を向けるべきだ。そうしない限り、これからもシングルマザーの子どもが、英語も分からないまま海外に養子に出されるのを食い止めることはできない。