各国にも同様の問題があったのだから皆で反省しようと言う橋下大阪市長だが、「同様の問題」についてあまり具体的に語らない。専門家でない彼が詳細に踏み込むことに慎重になっているのだろうと思うが、彼が米韓軍の慰安婦の利用をハッキリ指摘しないから欧米メディアにはまるで理解されていない。韓国メディアはある程度分かっているはずだが、安倍晋三や橋下徹は彼らにとってバッシングの対象でしかないので話にならない。
ただ今回は、タイミング良くパク・チョンヒ時代の慰安婦について韓国の国会で取り上げられている。これを戦略的に利用することも可能なはずだが、橋下にはその気はないだろう。
なぜこれくらいの記事を一般紙は書けないのだろうか?この問題に関しては、マイナーだがJCASTが一番いい報道をしている。
橋下徹大阪市長が、再び「慰安婦」問題に踏み込んだ。謝罪を求め続ける韓国に対し、慰安婦と同様のことを「あなたたちもやっていた」と主張したのだ。
韓国では早速、「また妄言」(朝鮮日報)「挑発再開」(YTNテレビ)などと批判の大合唱となり、「韓国もやっていたこと」の中身を考えようとする人はいないようだ。
韓国も日本も、一緒に反省するべき
橋下市長は11月10日、「新報道2001」(フジテレビ系)に出演した。番組終盤、5月の「慰安婦発言」について出演者が触れると、待ってましたとばかりに、スタジオを半ば置いてけぼりにして持論をまくし立てた。
橋下市長はまず慰安婦問題を、今日の日韓緊張の「根底」にある最重要課題だと位置付けた。そして、これまで日本政府がこの問題に「なんでもかんでも謝ってきた」ことがかえって問題をこじれさせたのだという。その上で、「慰安婦問題を正当化するつもりはない」としつつ、問題解決への処方箋をこう解説する。
「世界各国でもこの戦場での性の問題はあったんだ。だから韓国が謝罪を求めてきても、『あなたたちもやっていたようなことでもあるから、あなたたちも反省しながら、我々も反省する』という、そういうスタンスで臨めばいいと思うんですよ」
他国、特に韓国でも慰安婦と同様の問題があったという意見は、波紋を呼んだ5月の「慰安婦発言」当時と変わってはいない。
なお橋下市長が代表を務める日本維新の会では、7日に河野談話など歴史認識問題を検証するプロジェクトチームを発足させると発表したばかり。座長は「強制連行」否定論者として知られる中山成彬元文科相だ。ここのところ埋没が著しい維新だが、「歴史問題」への取り組みをアピールすることで再浮上を図る構えのようだ。
ベトナム戦争で生まれた「ライダイハン」問題
橋下市長は今回、「韓国もやっていたこと」の具体的な中身については言及していない。しかし、過去には「戦場での性の問題」として、朝鮮戦争やベトナム戦争の名前を挙げている。いずれも、韓国にとっては触れられたくない「歴史問題」だ。
まず朝鮮戦争中には「特殊慰安隊」と称された、韓国軍に管理された「慰安婦」が存在していたという。漢城大学の金貴玉教授が、証言や記録などから2002年にその存在を明らかにしたもので、軍による10代少女の「強制連行」なども行われ、韓国軍・米軍兵士を相手に「慰安行為」をさせられていたと金教授は主張している。その運営は、日本軍の慰安婦制度を参考に行われていたとされる。
もっとも韓国メディアはこの問題をほとんど黙殺、金教授にも「身辺に気を付けたほうがいい」と警告が来るような状態で、韓国内では日本軍「慰安婦」と違いその存在はまったく無視されていると言っていい。
一方ベトナム戦争においては、韓国軍兵士による性暴行が頻発したとされる。また現地女性との間に生まれ、ベトナムに残された「ライダイハン」と称された子供たちの問題も存在、両国の間の「しこり」となっているが、これも韓国側はおおっぴらに認めたがらない。
朴槿恵大統領の父が「慰安婦管理」疑惑
さらに、最近韓国の左派系メディアで大きく報じられているのが、朴槿恵大統領の父・朴正煕元大統領の時代にも「慰安婦」が存在し、朴元大統領が自らその「管理」に携わっていたのではないか、という問題だ。
韓国紙・ハンギョレが11月6日、野党・民主党の兪承希議員の主張として報じたところによれば、当時の朴正煕政権では「外貨獲得」のため、韓国人女性9935人を在韓米軍向けの「慰安婦」として組織していたという(1977年時点)。性病対策などには政府が直接関与、書類では「慰安婦」という言葉がそのまま使われており、朴元大統領が自らこれらの施策を決済していたことも明らかになった。
こうした「慰安婦」の存在自体は以前から知られていたが、朴元大統領の具体的な関与が取りざたされたことは、娘である朴槿恵大統領には耳が痛い問題だ。
韓国のネット掲示板にはこうした自国の「歴史問題」を挙げ、「愛国者さまたちってのは、こういう現実もわからないバカなんだよなあ」とぼやく人もあるが、今のところはごく少数に留まっている。
JCAST 2013.11.11