2013/11/07

[メモ]


【オピニオン】韓国の朴大統領、日韓首脳会談拒絶の根源は国内

韓国の朴槿恵大統領は英BBCとのインタビューで日韓首脳会談について、国内の世論調査で賛成が多いにもかかわらず、「無意味」だとの考えを示した。この拒絶は日本への歴史的な不満と関係があるのと同じくらい、現在の韓国国内の政局と関係している。

朴大統領の支持率は、低下しているものの60%前半としっかりしている。だが、肝心なのは、一連の政策ミスやスキャンダルを受け、内政に対する支持が50%しかないことだ。そのため、政治的資本の配置という面で朴政権に残された余地は想像されているより小さい。

このように国内が不安定なことから、成果が不確かなのに日本をめぐって最初に動くというリスクを冒そうとする意欲はほとんどない。特に理解しておいたほうがいいのは、朴大統領がそうした動きに出れば、父親の朴正煕元大統領や彼の残した複雑な遺産を引き合いに出した批判が再燃しそうなことだ。

ソウル大学の朴喆熙教授(大統領とは無関係)が指摘したように、大統領が受け継いだこの遺産は日本への対応面で最も過小評価されている課題だ。1961年から79年まで韓国を率いた朴正煕には日本帝国陸軍の将校を務めた経歴があり、1965年の日韓国交正常化の際に締結した日韓基本条約は日本に有利すぎるとの非難も聞かれる。

朴槿恵氏を批判する人が選挙介入疑惑を父親の政権が招いた結果に見せようとしてきたことを考えると、彼女が日本への対応を進めれば親日的でもあるとの批判まで招きそうだ。現在の韓国では親日は緋(ひ)文字(不義の罰としてつけられる印)に相当する。

朴政権はそれをおそらく見ることになるだろうが、少数の反日派に立ち向かうことで国内の政治的リスク全てを負うことになるだろう。これに対し、安倍首相は少数の反韓派と争うようなことは何もしていない。

このため、朴政権が前進するには2つの要素が必要だ。まず、朴教授が言及したように、首脳会談を行うのであれば日本からの保証を取り付ける。具体的には、日本側は会談後、朴大統領が韓国国内で困惑するような行動を控えるという保証だ。

最もわかりやすいのは安倍首相による靖国神社参拝だ。安倍氏はこれまで参拝を避けてきたが、首相側近の萩生田光一・自民党総裁特別補佐は年内の参拝予定について言葉を濁した。これは国内向けのメッセージだった可能性が高いものの、首脳会談後に参拝が行われるとの朴政権内の懸念は増幅しただけだ。

次に、会談を行うとなれば韓国には目に見える結果が必要だ。朴政権は最近、日本との軍事情報包括保護協定の締結に向けた協議をはねつけた。竹島(韓国名・独島)をめぐる対立には動きがない。

朴大統領はBBCとのインタビューで、「慰安婦」問題解決が政策課題の最前線にあり、これを解決すれば日韓関係改善に向けた道が開かれる可能性があるとの考えを明確にした。これが近いことを示唆する兆しはない。

朴大統領の支持率はじわじわ低下しており、朴政権が最近、日韓関係の改善は日本が正しい歴史認識を持てるかどうかにかかってくるとの声明を発表したことから、大統領が日韓首脳会談で前向きな対話を持てる公算は小さくなっているようにみえる。

当事者はみな、日韓関係の凍結が会談で短くなるどころか長期化すると覚悟しておくべきかもしれない。

(筆者のカール・フリートホーフ氏は、アサン政策研究所世論調査研究センターのプログラムオフィサー兼マンスフィールド財団米韓ネクサス研究者)

WSJ日本語版 2013.11.7