韓国:「親日」批判の歴史教科書 採用撤回の高校相次ぐ
韓国で、日本の植民地支配を美化したとして「親日」などと批判された韓国史の高校教科書について、学校側がいったん採択を決めた後に抗議が殺到し、撤回に追い込まれるケースが続出している。「最後の1校」とみられていた高校も7日、教科書採択を再検討することを決めた。
この教科書は、植民地支配や独裁政権を単純な悪と見なすのではなく、当時の時代背景も考えるべきだというニューライト(新保守派)の大学教授らが執筆。植民地支配の功罪や、朴槿恵(パククネ)大統領の父である朴正熙(パクチョンヒ)元大統領による独裁政治に理解を示すととられる表現が問題視され、左派からの猛攻撃を受けた。
韓国メディアによると、大幅な修正を経て昨年12月に最終的に検定を通過し、約20校が採択を決めた。だが、左派系市民団体や保護者が学校前で抗議運動を展開するなどして猛反発。一方で朴政権は、採択を撤回した学校に教育省職員を派遣し、「不当な外圧」がなかったか調査を始めるという騒ぎになった。
韓国では、各学年への科目配分は学校に任されている。韓国史は1年生で習うことが多いが、騒動に巻き込まれるのを嫌い、今年3月からの新学期では教えないことにした高校も出ているという。
毎日 2014.1.7
前半はもっともなのだが、けっきょくは「だが、教学社の教科書が、少なくない誤りや不適切な記述により、左派に付け入る隙を与えたのも事実だ。旧日本軍の従軍慰安婦や、日本の植民地支配下での近代化をめぐり、誤解を与えるような記述をした」となる辺り、韓国紙の限界か?
【社説】「親日」教科書たたきは韓国の歴史教育現場の実情だ
全羅北道全州市の象山高校が7日、保守系の大学教授らが執筆した教学社の韓国史教科書の採択を撤回した。同校側は「教学社の教科書採択を決定した後、学校のウェブサイトや電話を通じ、学校に対し悪口を浴びせたり、校長への個人攻撃が相次いだりしている」とし、外部からの圧力に耐えられなかったことをほのめかした。今年3月から新しい韓国史教科書を使用する全国約2300の高校のうち、教学社の教科書を採択した学校は探すのが困難なほどだ。これまで象山高校のほか、約20の高校が教学社の教科書を採択しながら、論議を呼んだ末、採択を撤回している。
韓国の歴史教育はこれまで、特定の歴史観に偏った学者や、これに同調する教師たちによって行われてきたといっても過言ではない。教学社の教科書は、このような歴史教育の現実を憂い、将来の世代に「正しい韓国観」を植え付けようという趣旨で作成された初の歴史教科書だ。その教学社の教科書が、教育現場へのデビューに失敗したことは、韓国の歴史教育を牛耳っている勢力の力がどれだけ強いのか、彼らの「反韓国史観」を正すにはどれだけ苦労しなければならないかということを逆説的に示すものだ。
左派の一部は、昨年6月に教学社の教科書の内容が公開される前から「教学社の教科書は(独立運動家の)金九(キム・グ)を『テロリスト』、柳寛順(ユ・グァンスン)を『女ヤクザ』と記述している」と主張した。教学社の教科書に「親日派」「独裁を美化」というレッテルを貼るため、ありもしない事実をでっち上げ、人々を扇動したのだ。ある野党の国会議員は、教学社の教科書の執筆者のあら探しを目的に、在籍している研究機関に対し、休講記録や出張費の内訳を公開するよう求めた。
教学社の教科書が教育部(省に相当)の検定をパスすると、今度はポスターを貼ったり、デモや署名運動を行ったりし、採択を妨害する工作に乗り出した。教学社の教科書を採択した学校が「親日・売国学校」呼ばわりされながら、採択の方針を維持するのは容易ではないだろう。教育基本法は「教育は政治的、党派的、あるいは個人的な偏見を伝播するために利用されてはならない」と定めている。正常な手段で国の検定に合格し、各学校に採択された教科書が、外部の不当な圧力によって採択を取り消されるというのは、教育の自主性に対する重大な侵害だ。
高校用韓国史教科書の編さんや採択の過程は、韓国史をめぐる歴史観や理念の対立であり、教科書自体の品質をめぐる競争でもある。教学社の教科書が、特定の理念に偏った勢力が仕掛けた三重、四重の障害物や妨害工作を乗り越え、教育現場に根を下ろすためには、これまでよりも数倍細かい準備や強い覚悟が切実に求められる。だが、教学社の教科書が、少なくない誤りや不適切な記述により、左派に付け入る隙を与えたのも事実だ。旧日本軍の従軍慰安婦や、日本の植民地支配下での近代化をめぐり、誤解を与えるような記述をしたのがその代表例だ。
次に歴史教科書が改訂されるのは、中学・高校の教育課程が変わるときだ。歴史教育を懸念するだけの力量のある学者たちが、韓国史を正しく教え、生徒たちの想像力を刺激できる面白い歴史教科書をつくるためには、今から準備しなければならないだろう。
朝鮮日報日本語版 2014.1.8