「日韓の問題」を普遍的な人権問題にすりかえるのはマニュアル通り。南京事件とか違う方向に話を持って行く。クィンテロ前市長は、すっかり騙されていると言っていいだろう。
人権問題の象徴になりつつある慰安婦像、他都市に飛び火も
慰安婦を象徴する少女像を設置した米カリフォルニア州グレンデール市の市議会で11月5日、「市民による意見表明」が開催された。市民が市政に関して自由に発言できるこの場は、ふだんは生活に関係する身近なテーマがほとんどだが、この日は、市長デーブ・ウィーバーと日本を糾弾する声であふれた。
5人の市議の持ち回りで市長を務めているウィーバーは7月、米西海岸で初めてとなる慰安婦像設置の賛否を問う市議会で、唯一反対を表明。同月中に像が設置された後、産経新聞など日本メディアの取材に「日韓の問題になぜグレンデールが首を突っ込まなくてはいけないのか」などと発言していた。
議場では韓国系の住民が次々と「意見表明」した。「市長は慰安婦問題を日韓間の問題とするが、それは、人々の関心を、人権問題という本質からそらすことになる」。こう発言したのは若い韓国系女性。カリフォルニア州全市に慰安婦像設置を呼びかけている「カリフォルニア州韓国系米国人フォーラム」(KAFC)のメディア担当者だという。
中国で5年間、科学の教師をしていたという白人男性も一気にまくし立てた。「アジアで旧日本軍がやったことに比べれば、ヒトラーのソ連侵攻は子供の遊びだ」。この日の「意見表明」では、発言に立った14人のうち9人が慰安婦像に言及した。
市民の発言後、像設置で中心的役割を担った市議のフランク・クィンテロが口を開いた。「市議会は正しいことをやっている。旧日本軍が満州からアジア南端まででやったことはホロコーストなのだ」
ウィーバーは最近、不測の事態に備え、移動の際に警護を付けている。
本来は政府の問題
「意見表明」の数日後、グレンデール市庁舎の応接室で、姉妹都市の大阪府東大阪市の市議、樽本丞史(じょうじ)(45)=自民党=は、クィンテロに向き合っていた。私費を使って単身で乗り込んだ。
樽本が像設置に対する抗議文を差し出した途端、クィンテロが表情を険しくした。「あなたは『南京大虐殺』を勉強したことがあるのか」。また、日本をおとしめようとする一方的な歴史認識が持ち出された。
グレンデール市のホームページには、東大阪市が像設置に賛同したかのような虚偽の記載があり、抗議文ではこの修正も求めた。両市がともに慰安婦問題の検証を行うといった条件も示したが、クィンテロは「難しい」と一蹴した。
樽本は市を代表する立場で訪米したわけではなかったが、東大阪市長の野田義和(56)も「年内までは我慢するが、それ以降も改善されない場合は姉妹都市の関係の凍結を考える」と話す。そのうえで「本来は政府、外務省が米国政府などに、しかるべき対応を迫らなければいけない問題だ」と指摘した。
まずは「韓国庭園」
グレンデール市の近隣でも、像設置を目指す動きがくすぶっている。
ロサンゼルス近郊のアーバイン市は11月12日の市議会で、現存する広大な記念公園の一角に「韓国庭園」を造成することを決めた。
2015年から着工し、270万ドルの造成費は韓国のNPOが負担するという。現時点で詳細は決まっていないが、慰安婦像設置の可能性もささやかれる。
同市の市長は2代にわたり韓国系。市は9月、それまで友好都市提携をしていた韓国・ソウル市瑞草区との関係を姉妹都市に格上げすることを決めた。市長のスティーブン・チョイは庭園造成が議会で認められる直前、瑞草区を訪れ、提携を祝った。
グレンデール市も、韓国の複数の都市と友好都市や姉妹都市として提携しており、公園の建設計画から像設置へとつながっていった。「同じことがアーバイン市で繰り返される可能性は否定できない」。こう考える在米日本人は多い。(敬称略