慰安婦問題を旧日本軍に特有の問題であると強調したがる人間は日本にもいるが、一番熱心なのは韓国だろう。彼らは韓国軍や米軍が同様の施設を持っていたか利用していたにも関わらず、これについては知らんぷりを決め込んでいる。しかし一方で、国際社会の注目を惹きつける為に「これは現在の問題でもある」といった建前も振り回す。ある時は「日本特殊性論(上野)」を主張し、ある時はそれとあべこべの事を言う。
上野千鶴子は「日本特殊性論」には反対である。しかし普遍的な問題として日本軍慰安婦問題が語られる事で日本が免罪されることも警戒しているようだ。
ひろたまさきは「従軍慰安婦」をめぐる倉橋正直、吉見義明、鈴木裕子の歴史研究を紹介しながらそのいずれもが「天皇制軍隊の特殊性」「日本近代公娼制の特殊性」「日本の家父長制の特殊性」「植民地支配のあり方の特殊性」など「三人ともに日本の特殊性を強調しすぎている点に違和感を覚える」という。...ひろたは「慰安婦問題を、戦場の特殊な問題、日本の特殊な問題に閉じ込めるような語り方はやめようではないか」と提案する。わたしはこの提案にまったく同感だが...そこには「特殊性」を脱した議論が今度は「普遍性」のなかに回収される危険もまた潜んでいる。
[...]この説(※引用者注:日本特殊論)によれば、「天皇制」とは近代化の「跛行」のおかげで世界史に類例のない抑圧的な支配をつくりあげた体制だということになり、それが生み出した「慰安婦」制度も歴史に類例のない残虐な性的虐待の制度だと見なされる。
反日を国是としてきた韓国でなぜ吉見や鈴木の言説が歓迎されてきたか、その答えはここにある。当然上野も分かっているはずである。
「軍隊に売春婦が随行した例はあるが、軍隊が買春そのものを組織した例はない」というように「日本軍」の特殊性が強調される。反天皇制論者のほうが、敵対すべき対象としての天皇制の特殊性を強調し、それを過大評価する傾向がある...
上野は少しはぐらかしてはいないだろうか?果たして吉見や、慰安所を「国家強姦システム」と言い切る鈴木や倉橋は、「軍隊が買春を組織した事」を問題視しているのだろうか?少なくとも我々が慰安所システムの問題点としてこうした人々から聞かされてきたのは、慰安所での「強制性」だったが?
* 上野: 「『慰安婦』問題を『皇軍』の特殊性に還元するパラダイム--仮に『(特殊)天皇制パラダイム』と呼んでおこう--は、日本文化特殊性論によくなじむ性格を持っている」