2011/01/29

民主化と慰安婦問題の顕在化【黒田勝弘】80年代




日韓新考(2002年)より。


近年の韓国における反日の動きは韓国社会の変化によるところが大きい。いわゆる従軍慰安婦問題もそうだ。・・・この時期(1980年代以降)にこの問題が登場した背景にはやはり韓国における民主化がある。

・・・盧泰愚政権移行の民主化時代の韓国は、あらゆる分野で自由化が進んだ。その最大のものが言論の自由だが、「性」にかかわる慰安婦問題も、この流れの中でマスコミに大々的に取り上げられることで公然化した。当時、韓国の二大テレビ局は慰安婦問題を競って長期の大河ドラマに仕立てて放送している。

1990年の国営・KBSテレビ「歴史は流れる」や1991年のMBCテレビ「黎明の瞳」がそれだが、とくに人気を博した後者は韓国人慰安婦のヒロインと徴兵された韓国人日本兵の慰安所でのベッドシーンから始まっている。これは明らかに民主化による「言論の自由」あるいは「表現の自由」の結果だった。・・・

慰安婦問題での支援・糾弾運動は主に女性によって展開されてきた。慰安婦問題の表面化は、韓国における民主化にともなう女権拡張の動きと重なっている。

民主化とは民主的でなかったとする過去に対する否定がともなう。だからこれまで隠されていたことを暴露したり、これまで否定されてきたことを肯定的に見ることが民主化で好ましいという雰囲気になる。慰安婦問題は前者であり、左翼解禁や北朝鮮に対する融和的見方は後者の典型である。


黎明の瞳: このドラマの成功が元慰安婦たちのカムアウトのきっかけを作り、慰安婦問題が全国的な関心を引く契機になったという報道もある。