2011/01/23

絵本作家クォン・ユンドクが語る慰安婦




日本ペンクラブと国際子ども図書館が主催した講演会「いま、韓国の子どもの本は?」の感想がネットに上がっている。クォン・ユンドクのインタビューの内容が読める。

韓国では絵本のテーマとしても慰安婦は人気があるようで、彼女の「花のハルモニ」という作品については以前にも紹介した。今年の6月には日本語版も出版されるという。

このインタビューを読むと、慰安婦に対するイメージが固定化している韓国の作家が語る慰安婦論は、けっきょくは定型から一歩も出られないのだな、と思う。



・・13歳で無理やり拉致されて船に乗り込まされ、気がついたところは日本軍の駐屯地で20人くらいの女の子が狭い個室に一人ずつ入れられ、日に10人、多い時は30人もの男性の相手をさせられる…想像しただけで胸が苦しくなります。そういう事実を淡々と伝えつつも、最後は今も続く世界の紛争地に想いを馳せ、何を私たちがしなければいけないかを問う形になっています。クォンさんは、この絵本を韓国の子ども達が読んで反日意識を強くしてしまったらどうしよう、そうではなく、平和の大切さを考えるきっかけにしてほしいと、構想から3年以上苦しんだ結果が、その優しい色合いの絵本になっていったのです。


慰安婦問題は一部の不良軍人の犯罪ではなく、「国家が」「組織的に」「動員」した「植民地の女性を制度的に性暴行した事件」とクォンは言う。

もともと「制度」や「組織的」といった言葉は、運動家たちが政治的理由(Wikipediaの「強制連行」の頁を読むとイメージできると思う)があって使っているのである。作家なら、そういう人達からは距離を置いて自分なりの分析を試みるべきだ。それに、このような説明では内地(日本)出身の慰安婦たちが可哀そうだ。「慰安婦問題の核心の当事者は、まさに軍隊と国家に違いない」という最後の部分は、吉見本そのまま。


クォンさんは、講演の中で「慰安婦問題は、一部の質の悪い日本帝国軍人たちが罪のない女性個人を性暴行した事件を示すのではありません。その問題の本質は、戦争という非人間的な状況下において、弱者である植民地の女性たち制度的に性暴行した事件というところにあります。軍隊が駐留した全地域には、慰安所が設置されて、国家によって組織的・体系的に人員が動員されて管理されました。慰安婦問題の革新(ママ)の当事者は、まさに軍隊と国家に違いないのです。


クォンは戦時性暴力は絶えず起きていると言いつつも、「日本帝国軍隊の蛮行(慰安所システム?)は明確に特別な物」と考えているらしい。↓


また一つ、重要な点は、その問題が単純に過去の問題ではないというところにあります。太平洋戦争期の日本帝国軍隊の蛮行は、明確に特別な物がありましたけれども、国家の積極的な介入や黙認の下に行われた軍隊の性暴力は、最近でも世界中あちこちの戦場で絶えず起きています。・・・戦争が終わった後も、軍隊が駐留したところであるならば、女性に対する性暴力から自由ではないのです。慰安婦問題の本質には、こうした点が存在していて、したがって絵本『花のおばあさん』もいかなる方式であっても、こうした点を表現しなければなりませんでした。」と語っています。


「事実」「和解」「信頼」「過去の問題ではない」、「教科書から記述が削除(された)」。


この絵本プロジェクトに携わった日本の絵本作家・・・童心社の編集長池田さん、韓国側の出版社の編集長の方々からもお話がありました。

そこで共通して語られたのは、まずは真実を知ること、そして悩むこと、そして伝えたことで憎しみを増すのではなく、互いを理解し、和解し、平和を求めてほしいということでした。東アジアの一員として、互いに信頼を築くためにも、特に教科書から記述が削除され知らされないままに育っている日本の子ども達・・・



クォの「花のハルモニ」の主人公シム・タリョンは、挺対協によれば、朝鮮半島において「野草取りに出かけたところ日本軍につかまりトラックに載せられ台湾の慰安所に連行」されたというから、本当なら議論の多い強制連行(徴用)の生き証人ということになる。日本の国連常任理事国入り反対運動にも関わり、昨年の12月に亡くなった。




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