ウィキペディア(英語版)の進駐軍の慰安所(RAA)の頁を読んでいたら(この項目があるのは英語版だけ。日本軍の慰安所に比べて国際的に注目されていないらしい)、女性が強制的に働かされていた日本軍の慰安所とは違う、と書かれているのに気付いた。
ところで、慰安婦問題の国際的「権威」とされる吉見義明は、日本軍の慰安所について以下のような点を指摘している(岩波新書「従軍慰安婦」)。
● 慰安婦となる道を選ぶ女性がいるはずはないからである。たとえ本人が、自由意思でその道を選んだようにみえるときでも、実は植民地支配、貧困、失業など何らかの強制の結果なのだ。
● 前借金で債務奴隷状態にされていることも逃亡ができない理由のひとつだった。軍は、慰安婦の借金をなくすように業者に指導していた。しかし・・・借金を加重していくことには、軍は介入しなかった。
● 日本軍は・・・彼女たちを保護するための軍法を何もつくらなかったのである(ちなみに慰安所規則に廃業の規定はちゃんとある)。
● 慰安婦制度とは、特定の女性を犠牲にするという性暴力公認のシステムであり、女性の人権をふみにじるものである。
さて、そこでウィキペディアのRAAの解説である。
Unlike wartime "comfort women" forced to serve Japanese forces, most employees of the RAA were Japanese women, mostly prostitutes and others recruited by advertisement as well as through agents.
日本軍の為に働くことを強制された戦時「慰安婦」と違い、RAAの従業員のほとんどは日本人であった。ほとんどが売春婦で、他は広告や代理人を通じて募集された人々であった。
However, there are testimonies from some women saying that they were coerced into service as bonded labor, and some Japanese sources even assert that the centers were in fact set up by GHQ's demand.
しかしながら、何人かの女性から債務奴隷としてサービスを強制されたという証言も出ている。いくつかの日本のソースは、施設は実際GHQの要求で設立されたと断言している。
Wikipedia Recreation and Amusement Association(2011.1.15)
ということなのだが、吉見の主張を踏まえて考えるならば、
1) 好き好んで慰安婦になる女性などいるはずはない。これは当然進駐軍の慰安所で働いていた女性を例外とする理由はない。ならば、(吉見理論を採用するなら)RAAでも自動的に強制性が成立する。
2) では、借金など雇用主との金銭関係で女性が債務奴隷にならぬよう米軍は介入していたのか?以前韓国の基地売春婦が債務奴隷状態であったという証言を紹介したが、買春を秘め事にしていた米軍がそこまで世話を焼いてくれたか疑問である。
3) 米軍は駐屯地(日本に限らない)の女性を守る為の軍法(廃業規定)を持っていたのか?これも同様の理由で疑問。
4) 「慰安婦制度とは、特定の女性を犠牲にするという性暴力公認のシステム」というのは、RAAも買売春施設である以上、これも問題なく適用されるはず。
Unlike wartime "comfort women" forced to serve Japanese forces(日本軍の為に働くことを強制された戦時「慰安婦」と違い)?・・・少なくとも吉見理論に従う限り、RAAは充分に強制売春施設の条件を満たしていそうだ。